ポプラ社 地域社会の絆を描く実話小説を児童向けに刊行

2022年11月8日

 

 ポプラ社は11月14日取次搬入で、徳島・木頭村での柚子栽培開発に挑んだ人々の奮闘を描いた児童書『黄金の村のゆず物語』(麻井みよこ著)を刊行する。

 

 同書は同じく麻井氏が執筆した、2020年刊行の実話小説『奇跡の村 木頭と柚子と命の物語』(KADOKAWA)をもとにしており、「子どもたちにも読んでほしい」という読者の声を受け、このほど児童書版として刊行するに至った。

 

児童書としての魅力

 

 前作『奇跡の村』を柚子製品などと合わせて積極的に販売した実績をもつ、徳島の書店チェーン・平惣から、ポプラ社・営業担当者への提案が端緒となり、麻井氏は同社・編集担当の原田哲郎氏に児童書版の企画を打診。

 

 原田氏は児童書版の刊行を決めた理由について「前作は過疎や自然破壊などもテーマに含む大人向けの作品だったが、柚子栽培に掛けた想いや絆を軸に物語を展開できれば、児童向けとしても魅力的な作品になると思い、刊行を決めた」としたうえで、「作品の舞台は徳島だが、小さな村が豊かになるために力を合わせ、柚子栽培という大きな事業を成功させる物語は、どの地域の子どもたちにも生きるヒントとなりうる」と同書について話す。

 

徳島から全国へ

 

平惣徳島店で『奇跡の村』フェア時の様子

 

 同社のこどもの学びグループ長・平瀬律哉氏は「まずは、徳島県内の子どもたちに確実に届けたい。自分が住む地域のことを深く知り、愛着を持つことは、子どもたちの心の成長にとって、とても大事。そのためには地域の協力が不可欠で、自治体を含め、地元の方々を巻き込むことができるのは、平惣様の大きな力。徳島県を中心に話題をつくり、全国に波及させていく。また電子書籍化の準備もいち早く進めており、平惣様の地元メディアへのアプローチなども参考にしつつ、NetGalley (ネットギャリー)を活用した施策や、大学の児童学科でのレビューコンテストなど、これまでやったことのない切り口での取り組みにも挑戦していく」と考えを示した。

 

 著者の麻井氏は「前作では木頭村の人々が村を守るために意見を衝突させながら、ダムや林業の問題に立ち向かう様子を大人向けの物語として書いた。本書では子ども向けということを意識して、柚子栽培を通じて地域社会の絆や、自然の美しさ、私たちが自然に生かされていることを感じてもらえるよう、前作の第一部を中心に再構成した。大人になったときに前作を読むと楽しめる要素も散りばめながら、読後にほっとして明るい気持ちが広がるような物語を目指した。保立葉菜氏による版画が挿絵としてそえられたことで、さらに物語に明るさとあたたかみが加わった」と語った。