PHP研究所で非訪問型の書店営業が実績をあげている。同社のeコマース普及推進部が立ち上がったのは2018年10月。ECサイトの営業だけでなく、直接訪問が困難なリアル書店への営業活動に取り組み、メール・FAXに加え、文化通信社が提供するデジタルチラシ配信サービス「BookLink」を活用している。同部・植田光太次長から話を聞いた。
訪問が難しい書店にリーチする新たな営業
創設のきっかけは約4年前、当時取締役だった瀬津要社長が「日本の書店は約1万軒あるが、PHP研究所が営業できている書店は約4000軒。残りの書店6000軒にリーチする方法はないのか」との提言だった。
植田次長は「あまねく広く、PHP研究所の商品を普及する。そのために既存の営業部隊から人員を割き、eコマース普及推進部が発足した」と経緯を語る。
書店営業に19年以上関わってきた植田次長は、営業トークのない状態で書店にアプローチする難しさを述べる。「注文書(販促チラシ)をしっかり作って、注文書のなかで内容を完結させなければいけない。FAXとメールで書店に情報提供を続け、より良い方法を模索した」と話す。
書店営業の武器になる注文書が必要
植田次長は「私自身も書店を訪問営業していた経験がある。そのときも注文書は誰が作るかとの問題はあった。結局、個々人で自分が使いやすい注文書を作ることが多かった」と振り返る。
そのうえで、「訪問営業する時間、受注処理の時間、書店に注文書を案内する時間。日々、発生する営業部の業務に追われ、注文書を作る時間は優先度が低くなりがちだった。そうなると口頭で説明し、訪問先の店頭で注文を取ってしまう。しかし、当時から書店営業の武器になる注文書は必要としていた」と強調する。
リアル書店の訪問部隊と連携、書店に情報を届ける
現在は部員5人が所属し、1カ月で制作する注文書は約60枚にのぼる。eコマース普及推進部で制作された注文書は、リアル書店の訪問部隊15人とも共有し、同じ内容のチラシを書店員に渡し、営業活動を行う。eコマース普及推進部は、もともとが営業部隊から切り離した部署であったため、連携の枠組みは創設当初から整っていた。
注文書作りの体制を整え、メールマガジンとFAXに加えて、デジタルチラシ配信サービス「BookLink」を活用し、書店からの受注数は増加している。植田次長が手ごたえを感じ始めたのは立ち上げからわずか1年後、当時の同部は部員3人の体制だったが、すでに目指すべき方向性は見えていた。
また、植田次長はFAXでの販促活動について「実験的に極端なセグメントをしたが、やはり注文は減ってしまった。FAXでなければ、幅広く情報提供ができない現状はある。しかし、全店に配信するのはやめて、書店の属性や実績に沿った案内を心掛けている」と話す。
FAXの通信費や書店が負担する印刷・紙代といった問題を踏まえたうえで、「単に受注を増やすだけでなく、迅速かつ正確な販促情報を書店に提供する方法が必要だ」と強調した。
「BookLink」新たな営業ツールに
文化通信社が提供するデジタルチラシ配信サービス「BookLink」に対し、メールやFAXしかなかった旧来の営業ツールに、新たな選択肢を与えてくれたと期待を込める。eコマース普及推進部のチーム全員が「BookLink」を利用し、サムネイルの視認性を高めるため、文字サイズを調整するなど、改善に取り組んでいるという。
また、「カラーで画面上の視認性が高い。他社の注文書と自社を比較分析し、注文書のデザイン改善でも活用できている」と話す。
植田次長は「書店さんの認知を広げるため、PHP研究所の注文書には『BookLink』の案内を下部に記載してある。書店さんが興味をもって検索してもらう。それが最初の一歩だと思う。一緒に認知をひろげ、書店と出版社にとって、より良いサービスにしてほしい」と話した。