タレントの井上咲楽さんら 「情報を疑え」で対談 新聞週間「記念の集い」

2022年11月15日

 

情報があふれる中でマスメディアの役割などについて意見を交わした

 

 日本新聞協会と在京の報道各社は10月24日、第75回新聞週間の関連行事「記念の集い」を東京・千代田区のプレスセンターホールで開催した。「情報を疑え」をテーマに、タレントの井上咲楽さんと元NHK専務理事で報道番組に長く携わってきた塚田祐之氏(井之上パブリックリレーションズ顧問)が対談。たくさんの情報があふれる中、情報の接し方やニュース報道のあり方、新聞・報道各社が果たすべき役割などについて意見を交わした。

 

 塚田氏は、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年春、「こまめに水を飲むと良い」とか「トイレットペーパーが不足する」といった不確かな情報があふれたことを振り返り、その中でマスメディアの情報の伝え方の難しさを指摘。井上さんも「『わかりやすい』がキーワードで、テレビや動画など、ぱっと見て判断してしまうのではないか。数字もそうで、例えばSNSで何万いいねが付いていると、それだけでその情報を信じてしまったりする」ことの怖さを語った。

 

 また、フェイクニュースが生まれる理由について、塚田氏は①自分の主張を正当化するため②話題にして面白がる人たちがいるため③クリック数に応じたネットのビジネスモデル―を挙げた。井上さんも「ネットに流れているニュースで、はっとする強い見出しを読むと、ついクリックして見てしまう。読んでみると大した記事ではなかったりする」と、見極めの難しさを話した。

 

 

「地方紙を読むのが楽しい」

 

 

 井上さんは「選挙を見るのが好きで、各都道府県に行っているが、その場所に行ってみないと分からないことも多い。選挙中は特に、行った土地の地元紙を買って読んでいる。政治だけでなく、その土地の話題がたくさん載っていて、読むのがとても楽しい」と明かした。さらに、「各紙を読み比べて、自分と違った視点の考えなどを知れるのも良いし、自分が読みたい記事だけでなく、興味がないと思っていた話題の記事も目に止まったりする。自分自身の新たな発見にもつながる」と、紙の新聞の良さも語った。

 

 たくさんの情報が溢れる中、塚田氏は「例えば何か高い物を買うとき、美味しいご飯を食べに行くときも、どれが良いかいろいろと調べる。今はそういった作業を『情報』でもしなければ、より正確なものにたどり着きづらくなっている」と話し、井上さんも「そういったことについては、若い人もシビアに調べている。だから、情報を見極めるというスキルは、ニュースを見ない人たちも日々の生活で培っているのかもしれない」と同意した。

 

 マスメディアに対して、塚田氏は「ネットの影響で、取材する側も速報に対応せざるを得なくなっている。時間に追われ、『深く』『なぜ』が減っている。テレビを見ても、同じ話題を何度も流している。取材の仕方にもっとメリハリをつけることが、結果的に読者や視聴者を引きつけることにつながるのでは」との考えを示した。

 

 

「情報を自分事として考える」

 

 

 最後に、井上さんは「今は一日中、たくさんのニュースがどこにいても入ってくる。自分の見ている情報源がどこなのか、それは情報なのか誰かの意見なのか、一度フラットな気持ちで見ることが大切だ」と呼びかけた。塚田氏も「いろいろな情報に対して、自分事として考えることが重要だ。そうすると、よく調べるし、探したりする。そうすることで、より正確なものに近づくだろう。その判断の軸として、新聞やテレビといった報道機関が担い続けなければならない」と訴えた。