首都圏を中心とした主要書店で構成する「悠々会」は11月9日、東京・新宿区の紀伊國屋ホールで講演会「本をひらく、世界がひろがる」を開催した。前半と後半に分け、本屋大賞を受賞した逢坂冬馬さんと凪良ゆうさんがそれぞれ登壇し、編集者と書店員を交えて対談した。
講演会は10月27日から11月23日まで実施されていた新たな読書推進キャンペーン「本との新しい出会い、はじまる。BOOK MEETS NEXT」の関連イベントとして開かれ、300人の観客を先着順で無料招待した。
冒頭、悠々会会長兼同キャンペーンの実行委員長の高井昌史氏(紀伊國屋書店)が「各地域でサイン会やトークイベントなどさまざまな読書推進企画を、読者に喜んでもらえるように展開していく」とあいさつした。
講演会で、今年の本屋大賞を受賞した『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)の著者である逢坂冬馬さんが登壇。「戦争という日常」をテーマに、編集者である早川書房の塩澤快浩氏と、大盛堂書店の山本亮氏とともにトークを繰り広げた。
ソ連時代の女性兵士を主人公とした同書は、ロシアのウクライナ侵攻によって取り上げられることも多いことについて、逢坂氏は「本屋大賞の受賞が決まった時に自分と小説の何かが変わった。新しい読者が読む時に、必ずいまの戦争を踏まえて読むはず。今までは覚悟ができていなかったが、これからはウクライナ情勢を念頭に置いてこの本を語らなければならない」と話した。
後半では「本屋さんとわたし」と題して、2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんと講談社の河北壮平氏、紀伊國屋書店の小泉真規子氏が登壇した。凪良さんは自身の作品が書店によって発掘されたこともあり、書店の大切さについて対談した。
また、自分の作品について、凪良さんは「想像力を大切にして、人と人とは分かり合えないというスタンスから、どう分かり合いを求めていく物語を書いていくか」と、込めた思いを語った。