ライツ社 初の絵本を刊行で児童書市場に、100年読み継がれる作品を目指す

2022年12月13日

 

 

 料理レシピ本大賞2022で料理部門大賞を受賞した『リュウジ式至高のレシピ』が23万3000部、デザイナーである著者が、認知症の人が見ている世界をビジュアル化した『認知症世界の歩き方』が16万6000部など、年間の刊行点数は毎年一桁にも関わらず、その実売率・重版率の高さで、黒字経営を続けるライツ社。

 

 兵庫県明石市に社を構える同社は、初版7000部、12月5日取次搬入で、同市在住の絵本作家・たなかしん氏による絵本『おたんじょうびふ~』の刊行を皮切りに、絵本・児童書マーケットに参入する。

 

 昨今、児童書市場の活況を受け、出版各社の新規参入は珍しくないが、同社は「100年先も読み継がれる絵本を」をテーマに掲げ、時代の流行に流されない「王道の絵本」を目指す。

 

 同社代表取締役社長・編集責任者の大塚啓志郎氏は、「創業当初から自分の子どもに読ませたい絵本を作りたいと思っていた。ただ子どもたちがこの世に生まれて、最初に触れる本は、自分の意志ではなく、親から与えられるもので、だからこそ、軽い気持ちでは作れなかった」と、これまで児童書ジャンルに着手してこなかった理由に触れたうえで、「出版社を立ち上げたからには、文芸や絵本・児童書など、“物語”の本を作りたいという思いもあった」と語る。

 

王道の誕生日絵本に

 

 同社は「100年先も読み継がれる絵本」を作るべく、2年前に絵本編集者を募集し、ポプラ社やフレーベル館で、編集としての長いキャリアを持つ、感応嘉奈子(かんおうかなこ)氏を採用。

 

 感応氏は同書について「これまでキャラクターものの誕生日をテーマにした絵本はあるが、誕生日そのものをテーマにした作品は意外と少ない。他にはない、王道の“誕生日絵本”を作ろうと心がけた」と話す。また書店からも「お子様やお孫様など、誕生日の贈りものとしておすすめしやすい」などの声が寄せられるなど、反応も良好だという。

 

 第6期決算(21年9月1日~22年8月31日)で大幅な増収増益となったライツ社。23年2月には、いしかわこうじ絵・サトシン案の新刊のほか、本屋大賞ノミネート作家による児童読み物のシリーズものの刊行が控えるなど、今後の同社の児童書動向に注目が集まる。

 

大塚社長(右)と感応氏