文化通信社はこのほど、2022年( 1月1日から12月10日まで)に「The Bunka News(文化通信)」のデジタル版で最も読まれた記事を集計し、発表した。最も読まれたのは「2022年度『年間発売日カレンダー』発表 『週5日以内稼働』 実現」だった。「年間発売日カレンダー」最新版は、近年必ず閲覧上位に入る記事だが、21年10月の配信ながら、22年通期でよく読まれた。【成相裕幸】
今年度は日本出版取次協会と日本雑誌協会の合同プロジェクトチームが長らく議論してきた「週5日以内稼働」が実現。土曜日の完全休配も5日増の年19日間となった。22年11月に発表された23年度「完全土曜休配」では6日増の年25日となり、ドライバーの労働環境改善にむけた動きは着実に進んでいる。
ただ、出版輸送事業者への負担は年々重くなっている。時間外労働の上限規制や割増賃金引上げが施行される物流業界の「2024年問題」が迫るなかで、出版業界あげての効率的な輸送体制への変革が求められている。その議論のなかでは、日本出版販売とトーハンのより深い協業だけでなく、「同一地区同一販売」の見直しを含めた検討も進みそうだ。
今年も話題だった書店の出店・閉店
出版業界人が一喜一憂するニュースといえば、書店の新規出店と閉店だ。今期最も話題になった出店は、リライアブルの大型複合店「コーチャンフォーつくば」(茨城)だった。
読まれた記事2位「リライアブル コーチャンフォーつくば店10月20日オープンへ」(22年8月15日配信)、3位「コーチャンフォーつくば店 2000坪でオープン 初日午前はマルシェ活況」(同10月20日配信)、7位「リライアブル つくば市に巨大店舗計画 関東圏2店目の複合書店」(同1月29日配信)と、上位10記事のうち3本がコーチャンフォーつくば関連だった。
計画段階、出店概要の確報、出店初日と初報から続報までランクインするなど、いち書店の新規出店としては近年ではまれにみるほどの注目度の高さだった。
「つくばにコーチャンフォーの建設計画の看板がでている」と情報を得たのは22年1月中旬。私事ながら、4月につくばへの転居を考えていた記者は内見の帰りに現場に立ち寄った。つくば警察署の目の前、枯草が刈り取られていない広大な土地に立つ看板の建設計画に書かれていた「延べ面積1万6251㎡」を坪換算したときに、「22年で一番話題になる新規店になる」と確信したことを覚えている。
10月20日の開店記事では「開店10分前には50人以上の列」と書いたが、平日木曜日の開店にもかかわらず、20分もたたずに200人を優に超える人入りだったようだ。開店最初の週末となる土曜日の14時前にも再来店。1階駐車場にとまっている車約400台のナンバープレートを確認すると、351台が県内のつくば、土浦、水戸から。地元民の関心の高さを感じた。
また、コーチャンフォーつくば店が開店する4日前の10月16日、車で10分程度にあるブックエースの書店「TSUTAYA LALAガーデンつくば」が閉店した。「ブックエース TSUTAYA LALAガーデンつくば閉店 奥野社長、つくば再出店に意欲」(同10月18日配信)が8位となった。
単店での収支は非常に好調で、閉店はテナントとして入る商業施設のクローズによる。関係者によると、ディベロッパーの都合ではなく、同地所有者との交渉が最終的に折り合わず、施設全体を閉じざるをえない状況になったためという。
同地近くに住む記者は、施設のクローズイベントを私用で見にいったところ、ブックエース・奥野康作社長をみかけたので声をかけた。取材後、奥野社長は閉店時間の最後まで店の出入り口で、「ご来店ありがとうございました」と来店者を送り出していた。閉店のニュースは耳目を集めやすいが、閉店日当日にトップが、同地近辺での再出店への意欲を表明したことも多く読まれた要因にあるだろう。
いち早く情報つかみ独自記事に
閉店記事では、「八重洲ブックセンター本店が営業終了へ 再開発で解体、跡地28年度新ビルに新本店計画 山﨑社長インタビュー」(同9月9日配信)が5位だった。インタビューにもあるが、トーハンが16年に経営に参画したときから八重洲地区再開発計画は動いていた。21年10月に「八重洲二丁目中地区」の再開発組合が設立されたとき、本店が立地する場所へ28年度に新たな商業ビルが建つことは発表されていた。そのニュースを知っている出版業界関係者にとっては、今後どのタイミングで閉店が告知されるかが注目だった。
記者が関係者にあたりはじめ、23年3月末に閉店するとの情報を得たのは8月中旬。同時に会社発表も9月上旬と知った。独自記事にすべく関係各所と調整。最終的に会社発表と同時刻に社長インタビューを配信することになった。なお、記事中で触れられている仮店舗については、12月上旬時点では「調整中」だという。