日書連「出版販売年末懇親会」開催 書店、出版社、取次一丸で 諸課題に取り組む必要性を強調

2022年12月20日

 

ホテル椿山荘東京で開かれた出版販売年末懇親会

 

 日本書店商業組合連合会は12月14日、2022年出版販売年末懇親会を東京・文京区のホテル椿山荘東京で開き、出版社、販売会社、書店の代表者ら約150人が参加した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、開催は3年ぶり。従来の立食形式ではなく、着席スタイルで行われた。冒頭、日本書店商業組合連合会・矢幡秀治会長(真光書店社長)があいさつし、秋の読書推進月間や「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」の話題に触れ、書店、出版社、取次が一丸となって取り組んでいく必要性を改めて強調した。各氏のあいさつ要旨は次の通り。

 

 

 

 

日本書店商業組合連合会・矢幡秀治会長(真光書店社長)

 

 今年は緊急事態宣言こそ出なかったが、新型コロナの第7波から第8波に差しかかっている。そのような中、私たち書店の売り上げは非常に悪い状態が続いている。中小書店をみると、10%以上悪くなっているところも多く、この1年間でも辞めてしまったり、外商だけになってしまうお店も多々見うけられる。

 

 前会長時代から「粗利益30%以上」という話をさせていただいているが、コロナ禍でありながら多くの出版社、取次の方々がさまざまな施策を打っていただき、大変感謝している。しかしながら、こういった厳しい状況が続いている。私たちもまだまだ頑張らなければならないが、これからも皆さんと一緒になって乗り越えていきたい。

 

 トーハンの近藤社長がJPICの理事長に就任され、書店を中心に特別委員会を作っていただいた。また、自由民主党議員による「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」も動き出した。私たち書店は日本の文化を守ってきたという自負はあるが、それを名前に入れていただき、当初40人だったメンバーは147人と同党議連としては最大級の規模に拡大した。

 

 さらに今年は、紀伊國屋書店・高井昌史会長兼社長が運営委員会委員長に就任して秋の読書推進月間「本との新しい出会い、はじまる。BOOK MEETS NEXT」もスタートした。書店だけでなく、出版社、取次、業界団体が一丸となって読書推進活動に取り組む動きが出てきた。日書連としても一緒になって取り組み、大きなうねりにしていきたい。来年に向けて、少しずつ明るい話題も出てきていると私は信じている。

 

 日書連は45都道府県、9つの委員会を設けて活動している。書店の生き残りをかけて各委員会が一生懸命に取り組んでいる。皆さんに届いていること、いないことがあるかと思うが、ぜひとも応援していただきたい。今、本当に厳しくて、あと何年かすると無くなってしまうのではないかと本気で思っている。早く成果を出したいという思いが強い。何か一つでも前に進められるように、一丸となって取り組んでいきたい。

 

 

 

 

日本書籍出版協会・小野寺優理事長(河出書房新社社長)

 

 コロナ禍に苦しんだ3年間で、出版業界もさまざまなことがあった。最初の1年間こそいわゆる「巣ごもり需要」で出版物の売り上げも伸びたが、この1年は世界情勢の影響で生活必需品の値上げや円安の影響などによって、厳しい状況が続いている。先日の報道によると、全国の自治体の26%に1件も書店がない状態だという。それは、つまり私たち出版社が出す出版物とお客さまが出会う場所が、それだけ減っているということに他ならない。ことは重大だと本当に考えている。

 

 しかし、その中で、今年からさまざまな取り組みが始まった。「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」に多くの自民党議員が集まったのも、各地の書店さんが地元選出の議員に働きかけていただいたおかげだ。改めて各地域における書店の重要度、大切さをひしひしと感じている。また、この秋には読書推進月間「BOOK MEETS NEXT」が始まった。来年は私たち書協としても、さらなる協力をすべく少しずつ計画を進めている。

 

 これら新しい取り組みに共通するのは、書店、取次、出版社という立場を超えて業界が一丸となっていることだ。これまで出版業界には相違があると、ことあるごとに言われてきた。しかし、この厳しい状況にあって、多少の意見の違いはあっても業界全体のためになるのならと、一丸となって取り組もうという風潮が生まれてきたのは大変意義があることだと思う。

 

 先日、東京都書店商業組合の「木曜日は本曜日」習慣化プロジェクトの説明会に出席した。そこでは、書店の皆さんの本気度を感じることができた。何より素晴らしいと思ったことは、普段は書店に足を運ばないような人たちに、来店のきっかけを作ろうとしていることだ。コロナ禍で在宅時間が増えたというきっかけが生まれると、書店に足を運ぶ人が増えた。

 

 このように、何らかのきっかけがあれば本を読みたいという人が、まだまだたくさんいると思っている。書店、取次、出版社、もしかしたら著者も一緒になって、そういう人たちが書店に足を運ぶきっかけを恒常的に作ることができれば、私たちの出版物はまだまだ読者に届くと確信している。この場がそういったきっかけ作りを話し合う場になればうれしい。

 

 

 

 

日本出版取次協会会長、出版文化産業振興財団(JPIC)理事長・近藤敏貴氏(トーハン社長)

 

 JPIC理事長として、日書連の矢幡会長とはいろいろなことを話し合いながら進んできた。これまで書店さんとの間になんとなく壁のようなものがあったが、そういったことを少し乗り越えられたのではないかと感じている。

 

 「BOOK MEETS NEXT」は高井氏に運営委員長を引き受けていただき、気合いが入り、連携の度合いが高まった。初めてのことだったので、いろいろな課題もあったが、一丸となって取り組むことができてよかった。この取り組みと連動して直近の11月も月次POSがかなり上がった。この間、書店店頭などで多くのイベントも開かれたが、特徴的なのはイベント開催の有無が書店の売り上げにも影響したことだ。やれば成果が出る、やるのとやらないのでは違うと改めて感じた。やはり一年中やらなければならない。

 

 反省点は、もともと書店に来ていた人たち向けのイベントであって、普段は書店に来なかったり、本を読まない人たちに対してのアピールが足りなかったこと。これから一年間、それを皆さんと一生懸命に考えて、来年開催の課題としたい。

 

 「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」については、12月8日に総会が開かれ「中間とりまとめ」を発表した。中身については「文化通信」がとても細かく書いていただいたので、読んでいない方はご覧になっていただきたいが、詳細をよく見ていただきたい。

 

 これまでも業界内では議論されてきたものの、書店、出版社、取次の共通言語として、それぞれの問題について同じ見解を出したことはこれまで無かったことではないか。さまざまな問題に対する考え方などを文章にして出している。これは必ず皆さんに確認していただきたい。文化庁、文部科学省、経済産業省、公正取引委員会など関連省庁にもっと真剣に取り組んでもらえるように、一丸となって取り組まなければならない。