毎日新聞社は優れた著作や出版活動を顕彰する第76回毎日出版文化賞(特別協力=DNP大日本印刷)の受賞作を発表し、贈呈式を12月12日、東京・文京区のホテル椿山荘東京で開いた。毎日新聞社・松木健社長らが、4部門の受賞作の著者と出版社に賞状などを手渡した。
贈賞式では、選考に関わった毎日新聞社の前田浩智主筆が「世界の先行きについて、希望よりも不安が勝るような状況の中、当たり前とされる価値観を見直すためのよりどころになる作品が求められている。今回の受賞作はそうした求めに応じている作品ばかりだと思う」とあいさつした。
造形作家の岡崎乾二郎さんは『感覚のエデン』(亜紀書房)で文学・芸術部門を受賞。「熱心な読者が各地にいたことが出版の後押しになりました」と読者に感謝した。
『大久保利通 「知」を結ぶ指導者』(新潮選書)で人文・社会部門に選ばれた瀧井一博さんは「大久保利通は地域で頑張っている人たちを掘り起こし、結びつける仕事をした人というイメージで書きました」と語った。
『津田梅子 科学への道、大学の夢』(東京大学出版会)で自然科学部門を受賞した古川安さんは「津田梅子と自然科学の関係を明らかにしたと評価されて、大変ありがたい」と喜んだ。
企画部門は、150人の語りを150人が聞いてまとめた『東京の生活史』(筑摩書房)が受賞した。編集した社会学者の岸政彦さんは「人々の語りをそのまま残す仕事を一生続けたい」とシリーズ化に意欲を見せた。