NHKテキスト定期購読獲得 積極的に取り組み続ける くまざわ書店・熊沢真社長に聞く

2023年2月28日

 

「書店として売りたい商品」と語る熊沢社長

 

 全国に230店舗を展開するくまざわ書店は、NHKテキスト定期購読獲得に積極的に取り組み、例年コンクールで多くの店が入賞する実績を残している。2022年度も上位70店の中に、全国1位に輝いたACADEMIAイーアスつくば店を筆頭に同社店舗が16店ランクインした。同社の取り組みと定期購読獲得にかける思いなどを熊沢真社長に聞いた。

 

定期購読獲得で常に上位ランクイン

 

 NHKテキストは放送と雑誌が連動したメディアミックスの走りです。長年の実績をもつ力のあるコンテンツなので、書店としても売りたいと思える商品です。

 

 当社が全店でNHKテキストの定期購読獲得コンクールに参加し始めたのは2013年からです。それ以来、店頭でお客様に取り置きをお勧めする声掛けをするなどの取り組みを続けており、この10年間、獲得数は毎年8000件台を維持しています。コロナ禍でも変わりはありませんでした。

 

 今年も2月中はこれまで定期購読していただいていたお客様が店頭に受け取りにいらしたときにお声掛けするか、お電話で連絡して、次年度も継続するかどうかを確認しています。

 

 定期購読獲得については、すでに店舗ごとの目標部数を設定し、企画書を各店に送りました。コンクールが始まったら全店の実績を集計し、毎週、各店舗にフィードバックしていきます。

 

 店舗の目標部数は前年実績から設定していますが、定期購読の獲得数はそれほど多くないのにNHKテキストの売り上げ自体は高い店もあるので、今年はそういう店舗は実績に上乗せした高い目標を設定するようにしました。また、飾りつけコンクールも全店参加していますので、テキスト4月号が発売される3月中旬には開始します。

 

お客様と書店にとってメリット

 

 定期購読獲得に取り組む意義としては、まず、お客様に店舗を定期的に来店していただけることです。来店されれば、テキスト以外の商材をお買い求めいただくことも少なくありません。

 

 それから取り置いてあることで、お客様に安心していただけるというメリットもあります。お客様が買い忘れてしまうこともありますし、6、7月頃になると配本数も落ち着いてくるので、いつ来店されても購入できると安心していただけます。

 

 それから、NHKテキストは放送と紙媒体が連動しているという点も、書店にとってはありがたい存在です。それは、たんに書店が売る商材があるという意味だけではなくて、小学生、中学生は紙のテキストを読む習慣をつけておいた方がよいと思うからです。「スマホ脳」とも言われますが、子どもの教育に電子の導入を性急に進めると、人間形成にマイナスの影響があるのではないかという指摘もあります。紙でテキストを読んで想像し、そこに自分でも書き込むという経験が大切だと思います。

 

毎年のありがたいイベント

 

 当社は「予約のくまざわ」などとも呼ばれるように、予約販売には積極的に取り組んでいます。ハリー・ポッターシリーズで03年に発売された第5作「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」を、発売前に全国の書店で最多の8万部を超える予約を獲得したことがきっかけでした。

 

 それ以降も、他の大手チェーン書店よりも予約を多く取るなど、店頭での声掛けによる予約獲得には力を入れています。そういう意味で、NHKテキストの定期購読獲得コンクールは、店舗にとって毎年定期的にある大きな販促イベントなので助かります。

 

 コンクールへの参加も10年たって少しマンネリ化することもありますが、その都度、NHK出版からカレンダーなどのノベルティーを提供していただき、声掛けしやすくしてもらっています。

 

 また、全店で獲得数を競う店舗間のコンクールを実施していますが、今後は個人間でのコンテストも考えていきたいですね。ベテランのスタッフはマンネリ化しがちですが、新たに加わった新人にとっては新鮮な体験になり、そういう人が良い成績をあげて評価されれば、全体への刺激にもなるでしょう。

 

 当社も最近は諸物価高騰の影響もあり、少々コスト削減の方向に傾きがちで、売ろうという姿勢が弱くなっているのではないかと反省しています。そういう意味で、定期購読獲得をきっかけに、積極的に売っていく姿勢を強くしたいと思います。

 

接客を売り上げに結び付ける

 

 定期購読を多く獲得する担当者には、お客様と顔なじみになって、お店に立っているだけで声をかけられるような人もいます。店頭での接客をどう売り上げに結び付けるかは重要です。セルフレジが増えるとレジでの声掛けが難しくなりますが、テキストの棚にいらっしゃるお客様にお勧めするなど、さらに積極的な声掛けをしていきたいですね。

 

 北海道のあるスーパーでは、お客様が店員と話すために来店しているという記事を読みました。

 

 それはお客様がそのお店を気に入っているということです。そういう接客を心がけていく必要があると思います。以前は学参売り場でお客様のレベルに合った参考書や辞典をお勧めする学参アドバイザーを置いていましたが、NHKテキストでもそういう取り組みはあり得ると思います。

 

バックナンバーの販売にも注力

 

 当社は雑誌の売り上げが全体の半分以上あります。なので定期購読も積極的に取り組んでいますし、バックナンバーの販売にも力を入れています。NHKテキストは、まさに次号発売以降も販売できるコンテンツです。例えば、『きょうの健康』は毎回取り上げる病気が違いますから、以前の号でも自分に関係する内容なら購入します。

 

 NHKは過去の番組もアーカイブで視聴できるので、それとの連動もあり得ます。実際に『きょうの健康』や『きょうの料理』といったテキストは、次号発売後も売れます。もしすぐに返品してしまったら、その売り上げを逃すことになります。

 

 決して大量に売れる派手なビジネスではありませんが、お客様が求めているのであれば、過去の号も揃えて、しっかりとメンテナンスして販売していく必要があると思います。

 

 それぞれ雑誌の特徴にもよりますが、雑誌の市場が大きく変わる中で、そうした販売方法はますます必要になります。そのためには、雑誌配本の仕組みを、最初に配本して終わるのではなくて、発売時に一定量を在庫しておき、発売後にPOSの初動3日程度を見ながら、できれば翌日か翌々日には追加が届くようなクイックレスポンスの仕組みがあるといいでしょう。