実用書で知られる株式会社西東社は、かつて中心だった常備による販売手法から、書籍1点1点を書店に提案していく提案営業に転換し、既刊を含めて売り伸ばす体制を整えている。2021年に稼働した光和コンピューターの出版ERPシステムでも、データを分析する「BIツール」を導入、営業担当者がいつでもデータを参照できるなど営業活動をサポートしている。
同社は1932年に学習参考書などで創業したが、「運転免許」と「釣り」を2大看板にした実用書の出版に移行。その後、入門書を基本にあらゆる実用ジャンルに拡大してきた。
さらに、近年は児童書分野にも進出。実用書で培ったノウハウを生かし、「物語を通して生活に役立つというコンセプト」(執行役員 営業局長・藤巻雅美氏)で、同社の大きな柱に成長した。現在の年間新刊点数は80点ほどだが、児童書が半数程度を占める。
電子書籍化は現在700~800タイトル。当初は現場からの抵抗もあったというが、電子化の有無を業務評価に加えたこともあり、ここ5年ほどは新刊の9割程度に達している。
「街の書店」に手が届く営業に
かつて、同社は400点ほどの常備セットを数千の書店に出荷し、売り上げのほとんどを占めていた。しかし、書店の減少や販売環境の変化に伴い、「売れるものをきちんと売るスタイルに大きく変えました」と藤巻執行役員。
特に、コロナ禍で「街の書店」の売り上げが拡大。「どうしても売り上げ上位書店に目が向きがちですが、大きな気づきになりました。どうすればそうした書店に手が届くのかを模索する3年でした」と営業局局次長兼営業部部長・德永美佳氏は話す。
そんな中で、4年前に刊行した『一生役立つ きちんとわかる栄養学』(飯田薫子・寺本あい/監修)が書店の仕掛けで15万5000部とブレイクするなどの成果が出ている。
システムは自社開発し約30年使っていたが、5年ほど前に入れ替えを検討。藤巻執行役員は「新たに作る選択肢もありましたが、業務を標準化することがポイントだったので、パッケージを考えました」と述べる。その結果、多くの出版社で導入実績がある光和コンピューターを選択した。
販売管理システム(取次・直販)、印税支払管理、製作・原価管理、電子書籍管理を導入。極力カスタマイズは行わず、「どうしても必要なものだけ改修しています。現場にコスト意識が生まれればという思いもあります」と藤巻執行役員。
一つこだわったのがクラウド化。同社はそれまでも災害などに備えるBCP(事業継続計画)に取り組んできた。そのために、クラウドと社内サーバーを同期させることで安全性と速度・利便性を両立する仕組みを構築した。
合わせて「BIツール」を導入。かつてはAccessで集計していたPOSデータなどの分析結果を、自宅、外出先からでも利用することができるようになった。
株式会社西東社
設 立:1932年12月
代表者:若松和紀
従業員:40名
所在地:〒113-0034
東京都文京区湯島2-3-13
電 話:03-5800-3120