茨城県、福島県、千葉県、埼玉県に複合書店を展開する株式会社ブックエースは、昨年11月に23店舗目となる「BOOKACE TSUTAYA イオンタウン水戸南店」をオープンしたが、同店によってモール全体の集客が3割増になるなど好調に推移している。
同店があるイオンタウン水戸南は、JR水戸駅から南に車で30分ほど、北関東自動車道茨城町東インターチェンジ近くの水戸バイパス沿いにあるオープンモール型ショッピングセンター。ブックエースは以前他書店が入居していたスペースに出店した。
売場面積は1フロア630坪。このうち本が300坪、レンタルが100坪、文具・雑貨が70坪、ゲーム・トレカが50坪、カフェが50坪。店長は昨年10月に商業施設の閉店によって退店した繁盛店「TSUTAYA LALAガーデンつくば」店長だった小松崎隆浩氏が、事業統括本部県西地区地区長と兼務で務める。スタッフは店長のほか社員4名とパート・アルバイトで約50名。営業時間は10~22時(トレカエース12~21時、カフェ10~20時)。
同店の年商目標は約5億円。本以外は売上高、客数とも目標を上回っている。本は出店直後のため定期雑誌の売り上げがまだ低いが、これからシーズンで同社が得意とするNHKテキスト定期購読獲得や、開店半年ほど経過してバックナンバーを在庫として確保できるようになった段階で、同社他店舗で好調な「雑誌買切施策」を導入するなど強化する。
「雑誌の売り上げが取れるようになれば本も目標に達する。実際、年始は我々が驚くほどの来店客数で、こちらが勝手に書店不況だと思い込んでいるのではないかと感じるほどだった」と奥野康作社長。
本の売り場では児童書が50坪と同社店舗では最大規模。キャラクターやシリーズごとの棚を作るなど、来店客が一目で好みの商材を見つけることができる。コミックスにも80坪を割き、「ドラえもん」「ワンピース」など長尺作品も全巻展開。合わせて壁面棚ではマニアックな選書による「沼(ハマる)」棚を展開するなどして質量ともに地域一番の品揃えをアピールする。
文具・雑貨コーナーではコスメや食雑貨を充実。独自仕入れによる駄菓子は、単価は低いが月間2万個の売り上げに達し、駄菓子1個で1つもらえるスタンプ10個で駄菓子100円分を購入できる「キッズスタンプ」も人気だ。トレーディングカードは対戦場所も確保して同社の独自ブランド「トレカエース」を展開する。
カフェは茨城県ひたちなか市に本社を置くサザコーヒーがテナントとしてブックカフェを運営。席数は32席。仕切りはなく本の持ち込みも可能だ。
外装は壁面に木製板を貼り屋根を黒く塗装するなど手を入れ、内装も床、壁を張り替え、LEDのスポット照明にするなど全面的に改装。外からはいつでも店内が見えるよう外周のガラス面には棚などを置かず、「居心地のよさ」と「カッコよさ」を演出。オープンから15年が経過して鮮度が落ちていたモールの中で異彩を放ち、全体の集客を上げることに貢献した。
複合により付加価値高い出店可能に
奥野社長は「本だけで出店の投資回収をすることは難しいが、当社は複合展開によって32%の粗利率を確保している。そのことで、これだけ手をかけた店づくりも可能になり、こうした立地への出店パターンができた」と複合展開について話す。
同時に「本がなければ成り立たない」とも述べる。「粗利益率は低くても来店客の半分以上は本のために来店しており、レンタル客の3割、文具・雑貨購入客の5割も本を購入する。本の集客と他商材の組み合わせによって来店動機を増やす効果は十分にある」という。
出店に当たっては、数カ月間をかけて独自に商圏範囲や競合状況などを調査し、複合アイテムの構成などを検討する本部体制を整えている。そして、店頭のサインやPOPなどを制作するデザイナーも抱え、各商材の仕入れ、商品管理、教育といったノウハウを持つスタッフも育っている。このことが同社の強みだとみている。
こうした力を生かして「今年中に数店舗の出店予定があり、今後も積極的に出店していく」と奥野社長は意欲を示している。
□所在地=〒311-3116茨城県東茨城郡茨城町長岡3480-101