超高収益企業で平均年収は約2000万円と、従業員の給料の高さがしばしば話題となるキーエンス(本社・大阪市)。同社関連の書籍が昨年末から相次いで発刊され、大手書店でもコーナーを設けて展開するなど売れ行き好調で、版元は増刷を続けている。
話題の書籍は日本経済新聞出版の『キーエンス 高付加価値経営の論理顧客利益最大化のイノベーション』(延岡健太郎)、日経BPの『キーエンス解剖 最強企業のメカニズム』(西岡杏)、かんき出版の『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』(田尻望)の3タイトル。さまざまな視点で、謎の多い企業としても耳目を引く同社の仕組みや企業文化を深掘りしている内容が好調の要因とみられる。
『キーエンス高付加価値経営の論理』は3月14日に初刷9000部で発刊し、すぐに2刷計1万4000部を決め、さらに増刷を予定。著者の延岡氏は、研究者に対して門戸を閉ざしてきた同社で調査・インタビューを許された初めての研究者という。高収益のビジネスモデルを堅持する同社を知り尽くした延岡氏が、聞き取り調査などに基づいて実体を詳細に解明する。
先行の『キーエンス解剖』との併売促進に向けて日経新聞朝刊広告を掲載。「読者の関心は非常に高く、メイン層は通常のビジネス書よりも30、40代が多く、20代以下の購入も。新卒・中途の採用活動の勉強に読まれているのでは」(日経BPマーケティング・リテール営業ユニットの今井勇太さん)という。
『キーエンス解剖』は、顧客価値を最大化して高収益を確保するその仕組みや風土を日経ビジネス記者が「解剖」する。何十人もの関係者に取材を繰り返し、営業や開発、商品企画、経営など様々な観点からキーエンスの実像とその文化を解き明かし、ノンフィクションとしても楽しめる。初版6000部で累計10刷9万部、電子書籍合算では10万部を超える。発売から3カ月が過ぎても好調を維持し、増刷と交通広告、SNSや動画配信などメディアの活用も後押ししている。「ここまで体系的に解説した類書はない。まずは初めの一冊としてお勧めしたい」(出版マーケティング部・鬼頭穣さん)としている。
『付加価値のつくりかた』は、ビジネス書では主題としてはあまり取り上げてこられなかった「付加価値」をテーマに、そのつくりかたをスキルとして身につけ、日々の仕事で実践できるよう体系立ててわかりやすく解説している。付加価値の高さを誇るキーエンス本社勤務のコンサルティングエンジニア出身による解説とあって注目度も高く、初刷5000部でスタートし、毎月の増刷を経て現在は9刷累計8万4000部。
ビジネスジャンル元棚に話題書コーナーでの展開も加わり、重版ロットも万単位と想定の倍以上の売れ行きを示しているという。「拡材(POP・A4パネル等)を準備している。ぜひ類書とともに展開いただきたい」(営業部・村越大将さん)と推奨している。【櫻井俊宏】