誠文堂新光社は5月16日搬入で、ウクライナの料理レシピ本『SUMMER KITCHENS 故郷ウクライナ追憶のレシピ』(オリア・ハーキュリーズ著)を初版4000部で発売した。
同書はウクライナ出身のシェフが2020年に英国で出版した本を翻訳したもので、352ページ、B5変型判、定価4620円という大型本。ウクライナの伝統的な小屋「サマーキッチン」で作る料理にスポットを当て、料理や風景、人物などの写真も多数収録する。
近年ウクライナの料理本が多く出版されている中、レシピだけではなく、ウクライナの風習や文化、サマーキッチンにまつわる著者の思い出や寄稿によるエッセイなども紹介する。
同社担当編集の若松香織氏は「料理好きな方はもちろん、食を通じてウクライナを知りたい方におすすめ。レシピ本としてだけではなく、読み物としても面白い」と話す。
原書の雰囲気を再現
今なお戦禍にあるウクライナで、失われるかもしれない風景の写真や古くからの風習を多く収録していることから、翻訳出版にあたり、写真やページレイアウトなど、原書を忠実に再現。さらにレシピにおいても、日本では入手することが難しい食材を、国内の食材に差し替えることをせず、原書の食材をそのまま掲載している。若松氏は「国内では入手しづらい食材もあるが、家庭料理なのでレシピ通りではなくても、あるものでアレンジをするときのヒントなども書いてある」と語る。
一方、表紙については、原書がイラストであるのに対し、写真をメインにするなど、大きくデザインを変えた。イラストの場合、日本の読者にはレシピ本だと伝わりにくいことから、サマーキッチンの小屋、料理、人物など内容をイメージさせる写真を起用することで、中身を想像しやすくする狙いもある。
書店外商、図書館にアプローチ
同社は主に外商向け商材として同書の販売戦略を立てる。22年の6月に企画を検討し始め、今年に入ってから外商活動を本格的にスタート。 23年1月に行われたトーハン会の書店が投票で仕入れる書籍を選ぶ「プレミアムセール」にエントリーし、各書店に配本するタイトルとして選出された。
同時に書店外商への直接案内も開始。営業担当の大杉卓氏は「ニッチな商材だが、書店外商の方には興味を持ってもらえている。この商品性を活かし、書店外商の方との協力関係を深めていきたい」と話す。
同書はレシピ本としての一面を持ちながら、ウクライナの風習や文化を記録する資料本にもなるため、今後は図書館への外商活動にも力を入れるという。すでに図書館流通センターにアプローチしたほか、5月から9月に書店外商を通じ、公共・学校図書館において、同社の他タイトルと組み合わせて案内する予定。なお同書の売り上げの一部は、ウクライナの子どもたちの支援に寄付される。