公益財団法人辻静雄食文化財団はこのほど、食に関わる出版物や作品、活動、人物を顕彰する「辻静雄食文化賞」の第14回受賞作品を発表した。今年度の同賞には、柴田書店刊行の『古くて新しい 日本の伝統食品』(著・陸田幸枝、写真・大橋弘)が選ばれた。
同賞は、食分野の教育と研究に生涯を捧げた辻調グループの創設者、辻静雄の志を受け継ぎ、2010年に創設。日本の食文化の幅広い領域に注目し、めざましい活躍をし、新しい世界を築き上げた作品、個人・団体の活動を表彰している。
今回受賞した柴田書店刊行の『古くて新しい 日本の伝統食品』は、日本の風土の中で育まれてきた伝統的食品を訪ねて各地を旅し、丹念に取材。その歴史や成立ち、製法を、製造工程を含む多数の写真とともに紹介している。
「モノとして存在するだけでは失われてしまう伝統食品の数々を言語化し、写真とともに再現可能な形で伝えたことは、大きな文化的意義を持つ。時間をかけた取材だけが可能にした記録を集大成した同書は、伝統食の百科事典とも呼べる」と高く評価された。
なお、同書の元になった柴田書店の『月刊 専門料理』の連載は、1990年代から雑誌「サライ」に連載された記事に基づいている。「サライ」の連載自体は「サライムック」(小学館)や『伝統食礼讃』(アスペクト)などの形でも刊行されているが、「刊行後時間がたっており、今回改めて編纂したことに大きな意義がある」としている。
今回の受賞について、柴田書店の担当編集・長澤麻美氏は文化通信社の取材に対して、以下のようにコメントしている。
『古くて新しい 日本の伝統食品』は、料理人向けの月刊誌『専門料理』の連載「日本の伝統食品」がベースになっています。漬物や乾物、調味料などひと世代前の人たちが食べていたものを残したいという気持ちと、最近発酵など昔の仕事が見直され、逆に新しいと受け取る人が増えている印象があり、「残しておかなければ」と昨年、一冊にまとめました。「生産者を直接たずね、ていねいに聞き取る」という著者の陸田さんと、カメラマンの大橋さんの取材自体、すでに作る人がいなくなって失われたものもあり、二度とできないものです。今回の受賞を伝えると、お二人とも驚き、すごく喜んでいました。