帝国書院は7月14日取次搬入で、日本全国の城をテーマにした『地図でめぐる日本の城』を刊行する。初版部数は1万8000部を予定している。歴史学者で日本城郭協会理事長を務める小和田哲男氏を著者として迎え、フルカラーで204ページにわたって、地図や地形図を用いて全国計1515カ所の城を収録する。小和田氏による19の城を特集した「名城探訪」ページも、読みどころの一つとなる。
ビジュアルを重視
特集の「名城探訪」では、最大6ページにわたって、現在の城の写真や鳥瞰図に加え、城周辺の地形図や当時の城を再現するCGイラストなど、地図と画像を多用しながら詳しく解説する。日本史・城郭研究者の第一人者の小和田氏と、地図出版社の帝国書院のコラボレーションが話題を呼んでいる。同社編集担当の大平原寛氏は「小和田先生はこれまで数十年にわたって、帝国書院の中学生向けの歴史教科書を執筆してこられた経験があるため、年齢問わず、幅広い読者層に受け入れられる」と話す。
同書では、帝国書院の強みである地図や地形図の角度から城を解説する。山や川など地理的な条件を考慮した築城時の背景を、地図や地形図を用いて詳細に説明しており、読者が城の立地や構造などを直観的に理解できるように工夫を凝らす。また、戦国時代を背景とした城を多く取り上げており、地政学の見地から、地図を通じて、地理的な要素がいかに同盟・対立関係などの戦略に影響を及ぼしていたかなどについても、詳しく言及する。さらに、城下町についても取り上げており、資料やイラストを用いて城と城下町の関係、当時の城下町で暮らす人々の生活の様子も詳しく伝える。
著者の小和田氏は同書刊行にあたって、「先日も松本城の天守に入るのに2時間待ちといった報道もあり、歴史ブームで城を訪ねる人が急に増えているという印象がある。城に関連する本も次々に刊行される中、単なる城の案内書・概説書ではない、実際に城歩きのときに役立つ城の本がほしいと考えていたところ、本書の執筆依頼をいただいた。自らが欲していた本を、地図を専門とする帝国書院で出せることは、私にとって願ってもないこと」と、執筆への思いを語る。
読者と直接交流図る
同社はSNSを活用して読者向けのアンケートなど、読者の意見を取り入れる市場調査を実施しており、それをきっかけに同書の企画を立ち上げたという。また、毎年12月に横浜で開催され、城ファンが集まる「お城EXPO」にも出展し、ゲラの展示や発刊予告チラシの配布、書名の人気投票などを実施した。読者と直接コミュニケーションを取ることで、彼らが満足できる内容を目指した。
大平原氏は「これから城に興味を持ち始める人の入門書や、旅行する際の参考としての側面もあるが、帝国書院ならではの地図要素と城を融合した本書は、今までの城をテーマにした本とは一線を画す。城ファンはもちろん、地図、地形図などを通じて、ぜひ本書を楽しんでほしい」と薦める。
書店からも両者のコラボに期待が寄せられている。帝国書院開発部の横山雅世史氏は、「人文歴史や旅行を扱うコーナーなど、複数の売り場で展開してほしい。これから夏の旅行に役立つ情報を提供する本としても注目を集めるのでは」と書店での展開で、売り上げも大きく伸びることを期待する。横山氏は「大河ドラマなど日本史マーケットが賑わうタイミングに合わせて、併売できるタイトル。長く売れ続けるポテンシャルを秘めている」と長期的な販売戦略も視野に入れる。
今後、新聞広告を中心にパブリシティ活動を展開していく予定。横山氏は「ファンや同書に興味を持った読者は、小和田先生との直接のやり取りを通じて、より一層同書の魅力を実感できる。歴史系の協会や観光協会とのコラボイベントやサイン会などを開催したい」と展望を語っている。