東急文化村は9月4日、今年度の第33回Bunkamuraドゥマゴ文学賞に、山崎ナオコーラさんの『ミライの源氏物語』(淡交社)が決まったと発表した。毎年代わる1人の選考委員が受賞作を決定しており、今回は歌人の俵万智さんが務めた。
同賞はパリの「ドゥマゴ賞」のユニークな精神を受け継ぎ、1990年に創設。権威主義に陥らず、既成の概念にとらわれることなく、先進性と独創性のある、新しい文学の可能性を探りたいと考えのもと選考。受賞作は毎年交代する「ひとりの選考委員」によって選ばれ、選考委員の任期は1年。次回の第34回(24年度)は小説家の桐野夏生さんが務める。
現代人が「源氏物語」を読むとき、ハードルとなるのは言葉の違い(古文の読解)と、倫理観や社会規範の違い。ルッキズム、ロリコン、不倫。現代を生きる私たちが名作古典の「源氏物語」をどう読めるか。受賞作は、社会の在り方に長く向き合ってきた山崎ナオコーラさんによる、現代人のための「源氏物語」エッセイ。
選考した俵さんは「『古典をなぜ読むのか?』という古くからある問いに対して、これほど明快で深い、それでいて新しい答えに、私は出会ったことがない」と高く評価した。