【連載スタート】売場を定点観測~明日からマネしたくなる「棚」づくり~

2023年11月1日

 「The Bunka News」ではオリジナリティあふれる棚づくり、目を引くフェア、売上アップに効果を発揮した書店の「棚」に焦点を当て、連載で紹介していく新コーナー「売場を定点観測~明日からマネしたくなる『棚』づくり~」をスタートする。

 

 第一弾は、2015年に大阪駅直結の商業施設内にオープン。「生活提案」を全面に打ち出し、陸上競技場のような楕円形の「マガジンストリート」、中央のカフェなど連日満席。カルチュア・コンビニエンス・クラブ本部から「最も平台、棚に熱量ある店舗」と一目置かれる梅田 蔦屋書店(大阪市北区)


 今回紹介する短歌『あこがれ』(田畑書店)、川柳アンソロジー『みずうみ』は、同店・文学コンシェルジュの永山裕美さんが監修。『あこがれ』は10月時点で約100冊を販売する好調ぶりを見せている。

 

 本の街「神保町」で70年以上にわたり店を構え、アイドル、コミック、鉄道、格闘技系に強みを持つ。そのほか、占い、精神世界、数学、映画、特撮、歴史など「趣味特化」を謳い、地下から7階「イベントスペース」まで8フロアを活用、イベントスペースは実に3フロアを充てる徹底ぶりで、イベント開催時は多くのファンが訪れ、盛り上がりを見せる書泉グランデ(東京都千代田区)

 

 福岡の「個性派書店」として名を馳せ、店主の大井実さんは、地元有力地方紙「西日本新聞」紙上で6年にわたり書評連載「カリスマ書店員の激オシ本」を担当するなど読者の「本選びのバロメーター」として活躍する。書評切り抜き面も巧みに店内展開に活用し、類を見ない店づくりが来店客の目を引くブックスキューブリック(福岡市東区)

 

 04年に全国屈指のビジネス街、「東京駅」前に開業。ビジネス書の強みは言うまでもなく、積極的なイベント展開、21年には絵本の主人公やストーリーをモチーフにしたグッズショップ「EHONS TOKYO」を、昨秋には「ひとりの、ひととき。」をコンセプトとした「Personal Lounge 丸善の三階」をオープンするなど全ジャンルで存在感を示し続ける丸善 丸の内本店(東京都千代田区)の4書店が登場する。

 

【梅田 蔦屋書店(大阪市北区)】

他店と差別化「詩歌」で店の特色打ち出す!

文学コンシェルジュ 永山裕美さん

 

「はじめての詩歌 Vol.4」フェア

 

  当店ではオープン当初から、詩歌の棚に力を入れてきました。

  昨今は短歌ブームと言われていますが、文芸書の中でも、まとまって扱っている店が少ないことから、「詩歌を店の特色にしていこう」ということは早くから決めていました。

 

  詩、短歌、俳句/川柳で、1スパンずつ計3スパンですが、20~30代の若い人に向けての品揃えを意識しています。


 また、1年に1回、「はじめての詩歌」というフェアを定期的に開催しています。これは著名な詩人・歌人・俳人の方に、はじめて詩歌に触れる人のためにおすすめの1冊を150字程度のコメント付きで紹介してもらい、その方の著書と併売するフェアです。


 今回で4回目を迎えましたが、毎回SNSでの反応も好評で、出版社、著者、読者をつなぐフェアに成長しているようです。

 

短歌棚


 リーフレットもその度に作成していますが、お客様からは、「保存版として大事にしている」という声もいただいています。

 

□売れ行き良好書
詩:『目をあけてごらん、離陸するから』(リトルモア)
短歌:『あこがれ』(田畑書店)/『4』(ナナロク社)/『うれしい近況』(太田出版)
俳句:『膚はだえ』(ふらんす堂)
川柳:『みずうみ』(田畑書店)/『金曜日の川柳』(左右社)

 

永山さん

 

【書泉グランデ(東京都千代田区)】

本屋ですが…カレーです!「地域密着型全天候対応おもしろ書店」

店次長 大内学さん

 

カレーの街「神保町」 カレーでお出迎え

 当店は現在、一歩、店内へ入ると「レトルトカレー」がお出迎えしております。


 世界でも有数の本の街・神保町は「カレーの街」としても有名なのは周知のこと。秋に開催される「神田カレーグリンプリ」も毎年大いに盛り上がります。


 そこで当店ではレトルトカレーを推しています。一大ブームを巻き起こし、いまだ人気の衰えない世紀末拳法コミック「北斗の拳」40周年ということもあり、当店限定の北斗の拳コラボカレーを展開中!


 ちょっと本屋っぽい!「神田カレーグランプリ×北斗の拳」も仕掛け、街も巻き込んでいます。


 オリジナルカレーは、尖りつつも美味しいレトルトカレーを作り続ける「36チャンバーズ・オブ・スパイス」に開発協力いただきました。

 

「北斗の拳」コラボカレーも展開


 「人の集まるところ商機あり!」「この街にやって来るお客様はナニを求めてやって来たのか?」神保町という本と古書のテーマパークを経験したのならば、お土産を持ち帰りたくなるのではないでしょうか?企画の意図にはこんなところも込められています。


 「地域密着型全天候対応おもしろ書店」、それが書泉なのです。

 

大内さん

 

□売れ行き良好商品(「」内は大内氏談)

【書泉オリジナル】
〇ケンシロウ愛のビーフカレー 「肉がゴロっとしている。さすがの辛さ」
〇ラオウの悔いなしチキンカレー 「レトルトと思えない、料理屋さんのカレー。しかし、ラオウはチキンなのか…」
【仕入商品】
〇メーヤウチキンカレー 「早稲田の名店メーヤウのチキンカレー。戦慄の辛さ。辛味をおさえたポークもあるが、なぜか辛い方が安い『バグ仕様』」
〇北新地玉鬘名物バターカレー「大阪・北新地の一見さんお断りの店で出されていたカレー。日本一、手に入りにくいカレー。なぜ本屋に!?」

 

【ブックスキューブリック(福岡市東区)】

「ゆるやか」に関連書を展開 6年間の地方紙「書評」連載も棚に生かす

代表 大井実さん

 

店主厳選「アラカルト棚」

 

 当店では配本は受けておらず、新刊の中から面白そうなものを選んで仕入れています。


 特集やフェアなどはほとんど開催しませんが、新入荷の中からピックアップして「アラカルト棚」と呼ぶコーナーで展開しています。


 その中から傾向が似た作品があれば固めて展開し、あえて言えばそれが「ゆるやかなフェア」かも知れません。


 写真のアラカルト棚の中では、今年出版された『伊丹十三の台所』に合わせて関連書を展開しています。また、毎月数回トークイベントや展覧会を開催しているので、入口すぐの棚で、それらに関連する書籍を展開し、告知に努めています。


 さらに、月に一回、6年ほど西日本新聞で書評を連載しているので、それらの記事をコピーしてパッキングした書籍に貼ってコーナー展開をしています。

 

書評を参考に本選び 「激オシコーナー」

 

□アラカルト棚作品
『ぼくの伯父さん 単行本未収録エッセイ集』(つるとはな)
『ヨーロッパ退屈日記』(新潮社)
など両作品とも伊丹十三著
□書評棚作品
『街場の成熟論』(文藝春秋)
『コモンの自治論』(集英社)
『日本が滅びる前に 明石モデルがひらく国家の未来』(集英社)

 

代表 大井 実

 

 

【丸善 丸の内本店(東京都千代田区)】

今後の成長見込める「宇宙ビジネス」に焦点! 「宇宙空間の利活用に取り組む宇宙ビジネス」

1階売場長補佐 早坂学さん

 

ジャンルの垣根越え「宇宙ビジネスフェア」

 

 これまで当店では宇宙関連書籍は、3階「工学書」の棚で展開してきました。しかし、近年インドをはじめ、西欧諸国以外の国や、民間レベルでも宇宙への進出が顕著になり、それに伴いビジネス方面でのニーズが高まりつつある現状から今回、ジャンルの垣根を越えたフェア展開へと至りました。


 カジュアルな宇宙ビジネスの入門書から、実際に参入する際に参考になる法律などの実務書まで硬軟幅広く集め、お客様の興味の濃淡に関わらず、何かしらアンテナに触れるような棚を作りました。 30~50代の丸の内ビジネスパーソンの皆様に、手にとっていただけております。


 宇宙ビジネス自体、まだ発展途上の分野ですので、今後も幅広く新刊などを追加しながら展開していく予定です。

丸の内のビジネスパーソンに人気

 

□フェア売れ行き良好書
『よくわかる宇宙ビジネス』(星海社) 
『NATIONAL GEOGRAPHIC日本版 2023年 10月号』(日経BP)
『宇宙ビジネス最前線』(日本経済新聞出版) 
□宇宙ビジネス実務書
『弁護士による宇宙ビジネスガイド』(同文舘出版)
『解説「宇宙資源法」』(第一法規) 
『世界の宇宙ビジネス法』(商事法務)