文化通信社は11月6日、全国各地で発行されている地域紙の優れた記事を表彰する第3回「ふるさと新聞アワード」の授賞者を発表した。今回のグランプリには、『熊野新聞』(和歌山県新宮市)の記事「嗚呼壮絶かな、観光合戦!!」(2023年1月1日付掲載)が選ばれた。そのほか11社が部門賞などに選ばれた。12月1日に授賞者らを招いた贈呈式を東京都内で開催する。
専門紙「The Bunka News」(文化通信)の発行をはじめ、活字文化推進事業を展開する文化通信社は、創業75周年を迎えた21年、全国各地の社会・経済・文化の発展、活字文化を守るため、主に市町村エリア向けに新聞を発行している「地域紙」を応援する目的で、地域紙のユニークかつ優れた記事や連載、企画などを表彰する「ふるさと新聞アワード」を創設した。地域にゆかりのある著名な審査員による最終審査を経て、グランプリおよび各賞を決定している。
3回目となる今回のアワードも、Google News Initiativeと株式会社PR TIMESの2社が協賛している。審査員は次の各氏(五十音順)。加来耕三氏(歴史家・作家)、小山薫堂氏(放送作家・脚本家)、高橋俊宏氏(ディスカバー・ジャパン代表取締役)、中川政七氏(中川政七商店会長)、山崎まゆみ氏(温泉エッセイスト)。
全国の地域紙から約200の記事がエントリーされ、文化通信社内で一次選考ののち、審査員が最終選考を務めた。最も評価が高かった記事をグランプリに選出。「もの」「こと」「ひと」部門に分け、それぞれ最優秀賞、優秀賞を選んだ。また、優れた連載、企画記事に文化通信社賞を贈る。
グランプリに選ばれたのは、熊野新聞の記事「嗚呼壮絶かな、観光合戦!!」──。「蟻の熊野詣で」のにぎわいを取り戻すべく、観光客の誘致に力を注ぐ現在の熊野地方だが、JR西日本が初めて利用者が少ない在来線17路線30区間の収支を公表。熊野地方の中心・和歌山県新宮市と白浜町間が、約28億円の赤字であることが分かった。
その話題を起点に、「時代が移り変わり、交通形態も大きく変化している。明治〜昭和の時代、熊野地方への誘客促進に一役も二役も買っていたのは鉄道会社だった。その歩みを紹介するとともに、『なにわの商人』たちから何か学べるところがあるのではないか。古写真や資料を元に、列車利用促進に向けたヒントを探った」(同紙の記者コメントから)。
この記事について、審査員5氏がそれぞれ高く評価した。加来耕三氏は「『観光合戦!!』と題した華やかな記事で、ひときわ目に留まった。交通・鉄道を軸として、観光地のあり方が論じられており、特に、古資料を丹念に読み込んで執筆されたことが伝わってきた。かつての時刻表、リーフレット、駅の風景など、数々のカラー写真が掲載され、当時を懐かしみながら、記事を読まれた方も多かったのではないか。熊野への強い思いが込められた記者の記事が、熊野の観光・交通の活性化のヒントとなることを願ってやまない」と寄せた。
また、中川政七氏も「地元の鉄道路線が大赤字であるというネガティブなニュースを起点に、かつて活況であった熊野観光の様子を紐解きながら、未来に向けて熊野観光がどうなっていくべきかを取材・提言している素晴らしい記事。切り口や編集も秀逸で読み物記事として面白い。タイトルやデザインにも気が配られている。この方が書いた他の記事も読みたいと思わせる」と高く評価した。
授賞者や審査員、関係者らを招いた贈呈式は12月1日、東京・台東区の東天紅上野本店で開催し、賞状や賞金などを贈る。
贈呈式の取材などお問い合わせ先
文化通信社(増田、田中)
電話:03ー5217ー7730
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