『魔女の宅急便』の世界広がる 東京・江戸川区に魔法の文学館オープン

2023年11月8日

アートディレクターのくぼしまりおさん(左)、館長の角野さん(左から2人目)、斉藤区長(中央)、設計の隈氏(右)

 

 児童文学作家・角野栄子さんの作品の世界観を表現する「魔法の文学館」(江戸川区角野栄子児童文学館)が11月3日、東京・江戸川区にオープンした。10月17日に報道陣向けの内覧会とオープニングセレモニーが行われた。館長の角野さん、建築家の隈研吾氏、江戸川区長らが出席し、文学館近くの小学校の児童3人もお祝いに訪れた。

 

2階へと続く大階段

 

「本をひらけばたのしい世界」

 

 魔法の文学館は、江戸川区の南、旧江戸川のほとりにある緑豊かな「なぎさ公園」の丘の上に建てられた。


 設計は、建築家の隈研吾氏が担当した。外観は、フラワールーフと名付けられた大きな屋根が印象的な純白の3階建て。丘の斜面に建ち、周囲とバランス良く調和している。

 


 館内に入ると、まず初めに角野さんの手書きメッセージ「本をひらけば たのしい世界」が目に飛び込んでくる。
 館内は、角野さんの娘でアートディレクターのくぼしまりお氏が、角野さんの代表作『魔女の宅急便』のコリコの町をイメージしてデザインした。壁や本棚、イスなど、いちご色の世界が広がり、子どもたちはもちろん、大人のファンにも楽しい空間となっている。

 

ラビットチェアが置かれている2階ライブラリー


 あいさつに立った江戸川区の斉藤猛区長によると、文学館は「江戸川区でいちばん標高の高い海抜13.5mの丘にできた」とのこと。前区長・多田氏が、江戸川区にゆかりのある角野さんに文学館の構想を持ちかけてスタートし、「構想から約5年で(ようやく)完成した」と明かした。「日本中の子どもたちに、わくわくどきどきしてほしい」と笑顔で話した。


 設計は、建築家の隈研吾氏が担当した。隈氏は建物について、「外観は家のように小さく、中に入ると町のように大きい、めずらしい設計にした」とし、丘の上に建つ文学館が「江戸川区の名所となり、世界中から人が訪れる場所になることを期待している」と話した。

 

正面入り口から眺めると小さなおうちのように見える外観。建物の右手に芝生の広場が


 もともと海抜の低い南葛西エリアに人工でつくられていた丘は、文学館の建設に伴って歩きやすく整えられ、青々とした芝が茂っていた。文学館利用者は、館内だけではなく、外の芝の上でも読書を楽しむことができる。


 角野さんは開口一番、「今日は魔法を使って、空の雲を全部取り払いました」と、笑顔であいさつ。この日が雲一つない快晴に恵まれたことを喜んだ。ライブラリーには、著書だけでなく、角野さんがセレクトした国内外の児童書約1万冊が並んでいる。(ここに来たら)「1冊読み終えて帰ってほしい。読み終わるような長さの本を選びました」と話した。

 

館長の角野栄子さん


 子どもたちの自主性を生かすため、本はあえてあまり分類しないように配置されている。また、館内のあちこちに、「かえすばしょがわからない本はここへ」と日本語と英語で書かれた棚やボックスが設置され、誰もが気軽に読書を楽しむことができる。

 

 

 1階には、ライブラリーのほかに、『魔女の宅急便』の海外翻訳本がズラリと展示されている。「黒猫シアター」では、インタラクティブな参加型プログラムを楽しむことができる。2階にはライブラリーのほか、角野さんのアトリエや半年ごとに展示が入れ替わるギャラリーも。3階には、見晴らしの良いカフェが設置されている。

 

カフェに併設された眺めのいいテラス席

 

 1階入り口脇のミュージアムショップには、文学館でしか買えないオリジナル商品を中心に約100点のグッズが販売されている。館内で使用されているいちご色のラビットチェアなど、受注販売の商品も扱っている。

 

1階入り口を入ってすぐ脇にあるミュージアムショップ


◇所在地:江戸川区南葛西7―3―1なぎさ公園内
◇開館時間:9時30分~17時30分(最終入館 16時30分)
◇休館日:火曜、年末年始 

◇入館料:一般(15歳以上)700円(江戸川区在住・在勤・在学者500円)/こども(4歳~中学生)300円(同200円) ※日時指定の事前予約制。公式サイトで受付

 

3階カフェメニューの一例。手前「キキライス」、奥「ハートをあなたに」