文化通信社はこのほど、本紙「The Bunka News」のデジタル版で2023年にアクセス数の多かった記事ベスト10を集計(2023年1月1日~12月8日)した。最も読まれたのは今期の大型出店の一つ『ブックエース「TSUTAYAデイズタウンつくば」開店 トレカに行列 2年以内にブック&カフェ構想も』(10月17日配信)だった。
ブックエースは前年、近隣店舗「TSUTAYA LALAガーデンつくば店」が同社含めた多くのテナントが本意ではない形で閉店を余儀なくされた。TSUTAYAデイズタウンつくば出店に際しては、LALAガーデンつくば店閉店後から早々に奥野康作社長は「2~3年以内に近隣での再出店」を掲げていた。現在入居するデイズタウン店は大型スーパーが閉店した跡地(750坪)にあるが、同施設地下階も含めて模索していたという。
開店日は前年に「LALAガーデンつくば店」が閉店した日と1日違いの10月17日。地元住民からの再出店への期待も大きく開店日前から店内の様子をのぞきにくる姿も見られた。オープンから2カ月ほど経つが土日になると駐車場の混雑が続いている。
2位は『日販 25年コンビニ配送終了へ トーハン引き継ぎも「空白期間」発生か』(10月26日配信)。23年の一番注目された出版流通の話題と言っていいだろう。本紙の第一報をうけ日本経済新聞、朝日新聞、共同通信社ら大手メディアが追随した。本紙が初めてこの件を知ることになったのは、23年3月あたり。当初「24年2月に終了」と各所にアナウンスされていたが、周辺を探っていくと「とてもそんな早急にはできないだろう」との見方があった。その後しばらく噂は立ち消えとなっていたが、9月~10月にかけて雑誌出版社周辺から現実のものとして聞こえてきた。
関連してランクインした10位『【日販、CVS配送から撤退】奥村景二日販社長に聞く 混乱ないよう引継ぎまで物流請け負う ブックセラーズ&カンパニーで新たな取次モデル』(11月9日配信)にもあるように、両取次間での話し合いはこれまで以上に密に求められることは間違いない。日本雑誌協会、日本書籍出版協会など出版団体に加え東京都トラック協会が連名で、両社に円滑な移行協議を求めたことが明らかになっている(12月13日既報)。今後の両社の発信に注目したい。
5位は『雑誌「完全土曜休配」は6日増の年25回に 2023年度「年間発売日カレンダー」決定』(22年10月28日配信)。「年間発売日カレンダー」は毎年必ず閲覧上位に入る記事だが、今年も関心が高く23年通期でよく読まれた。
直近11月に公表された最新版『雑誌 24年度「完全土曜休配日」12日増の37日 京都など1府3県で発売日1日遅れ』(23年11月2日配信)では、輸送会社の集荷作業がない「完全土曜休配」は23年度より12回増の年37回。
さらに、輸送スケジュール変更も発表され、雑誌は、24年4月から京都府(共配エリア)、兵庫県(共配エリア)、和歌山県、愛媛県の4府県で発売日が1日遅れることになった。出版輸送は両取次会社が配送ルート見直し含めて効率化に注力しているがさらなる見直しが求められそうだ。
大手出版社が主導する流通改革も着実に実行されている。6位『8月からコミックスなどへのRFIDタグ挿入開始 大手出版社3社とPubteXが書店に通知』(8月9日配信)は、コミックスなどにRFIDタグが挿入され出荷が開始したことをいち早く報じた。講談社、小学館、集英社の雑誌扱いコミックスや新刊文庫から始まったが、これまでに目立ったトラブルなどは確認されていないようだ。今後は新刊単行本などにも対象が拡大されていくことが予想される。
9位『トーハン×DNP 「トーハン桶川センター」に書籍製造ライン導入目指す』(10月30日配信)も今後の出版流通の将来像を見通す上で欠かせない動きだ。トーハンによると「取次の流通拠点内で書籍製造を行うことは、国内初の取り組み」。書籍製造用データを出版社と共有し、少部数制作が可能となるプリントオンデマンド技術を活用した新たな製造ラインは適時適量生産・出荷リードタイム短縮・返品率改善などこれまでの出版流通が抱えてきた課題解決の一助になる可能性を秘めている。
出版物の製造と流通がより近い距離で結びつくことで機能不全といわれて久しい出版流通の新たな展開も期待できる。運用開始は25年度を目指すとしている。