神奈川県に5店舗を展開するBOOK PORT(ブックポート)は、2023年7月にフルセルフレジを全店舗で導入した。稼働後は大きなトラブルもなく、レジカウンターに入る従業員を減らすことができた。書店部門の総責任者を務める書籍部門・成川真部長は「導入してよかった」と手応えを感じている。
ブックポートは横浜市鶴見区に本社を置く井上鋼材株式会社が1987年に資材置き場だった場所を「地域の人に喜ばれる」施設としてオープン。現在は井上鋼材本社2階にある鶴見店(横浜市鶴見区・150坪)をはじめ、栗平店(川崎市麻生区・120坪)、中野島店(川崎市多摩区・55坪)、緑園店(横浜市泉区・130坪)、大和店(大和市・95坪)の5店舗と、高校図書館などに納入する外商部を運営する。
小規模店はセルフレジのみに
同社はロードサイドの単独店舗が中心のため、コロナ禍では来店客が増えたが、その後は以前より売れ行き不振が加速した。成川部長は経営を続けていくために粗利益率の良い雑貨などの商材を強化し、人件費を抑制するためセルフレジ導入に踏み切った。
同社は10年ほど前に光和コンピューターの店舗システム「BookAnswer Ⅲ」を導入。インボイス対応の改修が必要なこともあって、システムを「BookAnswer Ⅳ」にバージョンアップし、端末はセルフレジに切り替えた。「どうせ入れるのであれば他に先駆けて導入して早く経験したかった」という思いもあった。
導入したのは商品のスキャニングから精算まですべて購入客が行うフルセルフ型。「セミセルフでは人件費を削減できません。最初から入れるならフルセルフだと考えていました」(成川部長)。
現金のほか、クレジットカードはもとより、各種キャッシュレス決済や図書カードが利用できることも導入の理由だ。規模が大きく有人レジ2台を使っていた鶴見店、緑園店、大和店はセルフレジ1台と有人レジ1台に、小規模で有人レジ1台だった栗平店と中野島店はセルフレジ1台のみにした。
レジ担当者が店内作業可能に
導入から1カ月程は担当者がレジわきに立ってサポートできる体制をとったが、クレームなどはほとんどなく、「お客様もスーパーなどでセルフレジを経験されています。『本屋さんもこうなるのね』といった反応で、ほぼ受け入れられています」と成川部長は述べる。
また、操作画面がわかりやすいため、初めて操作するお客も迷うことがないという。導入から2カ月ほどで半数以上のお客がセルフレジを利用するようになった。
「これまで小さい店舗のレジでも最低2人は必要でしたが、セルフにしたことで1人の時間を作れるようになりました」と成川部長。人件費を抑えるとともに、これまでならカウンターにはりついていた担当者が店内で作業することも可能になった。
休日型の鶴見店では、比較的すいている平日日中は、1人のみの担当者がレジカウンターを離れてコミックスのシュリンク作業などを行っている。レジには呼び鈴を設置して、呼ばれたら駆けつける。
「セルフレジの前で迷っているお客様をフォローすることは大切です。別の作業に熱中しすぎてそういうお客様を見逃さないようスタッフに指導しています」と成川部長はサービス向上に努めているが、「これからの運営を考えると、導入して良かったと思います」と手応えを感じている。
営業継続のため雑貨などに注力
同社では近年、文具・雑貨などの商材を拡大している。23年4月には「その他」に入れていた雑貨を、商品管理のために新ジャンルとして独立させた。「新しいジャンルにしてお客様にアピールしたいと考えました。実際に売り上げは伸び続けています」と成川部長。
鶴見店では数千円の女性用傘や2万円を超える男性向け革鞄なども並ぶ。店舗の向かいにある大手ディスカウントストアの店舗では数百円の傘が売られているが、「3000円の傘をだれが買うの?と思いましたが、置くとコンスタントに売れました。カルチャーショックでした」と成川部長。
こうした経験を通して、「いまでも書店には多くのお客様が来店されます。そういう方々に商材を提案できるのは書店のアドバンテージです」と感じている。仕入れ先は成川部長が展示会などで広げている。ほぼ買い切り条件だが粗利益率は高い。
「僕は本が好きで書店に入りましたから、本の売り場を割きたくはないのですが、書店を続けていくためには粗利益率の高い雑貨などを扱う必要があります」。セルフレジ導入も同じ思いで踏み切った。
BOOK PORT本部(鶴見店)
所在地:神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央3-6-25 本社2階
電話:045-505-0203
営業時間:10:00~23:00(日祝は22時まで)
休日:年中無休(元旦のみ休業)