小学館は3月1日、帝国ホテル(東京・千代田区)で第69回小学館漫画賞の受賞4作品の作家を贈賞した。昨年まで設けていた「児童」「少年」「少女」「一般」向けの各部門を今年から廃止し、候補作すべての中から受賞作を選出。同社は、「現在の漫画が世代や性別を超えて広く読まれる文化となっていることを鑑みた」としている。
冒頭、小学館・相賀信宏社長があいさつに立ち、第50回と第58回の受賞者であり、1月に急逝した漫画家・芦原妃名子さんへの弔意を表し、「再発防止に努める」と述べた。
また、今回から部門を廃止したことについて、これまで「男女問わずさまざまな年代の読者に親しまれた数多くの優れた作家を顕彰してきた」とし、その精神は変えずに部門という制約を取り払ったとして、「漫画賞が時代に合わせて変化していくための第一歩」と語った。
受賞作は①『数字であそぼ。』(作・絹田村子)、②『葬送のフリーレン』(原作・山田鐘人、作画・アベツカサ)、③『トリリオンゲーム』(原作・稲垣理一郎、作画・池上遼一)、④『逃げ上手の若君』(作・松井優征)の4作。①~③は小学館で、④は集英社で連載中。
贈賞式で『数字であそぼ。』の作者の絹田氏は、自作を「メインディッシュではなくお新香のような存在」とし、大多数の人が知らないような世界を描き、「自分とは大事にしているものが違う人がいるんだな」とフラットに世界を見つめられるような手助けがしたいと述べた。
『葬送のフリーレン』は、山田氏のネームを基に作画しているという作画のアベツカサ氏が、「ネームの面白さが読者に伝わるように描いてきたつもり」とし、「多くの読者に支えられて受賞できた」と喜びを述べた。
『トリリオンゲーム』は原作の稲垣氏が、「イービルとグッドの二極化の話ではないところを評価していただけたのかと思う」とし、自身はドラえもんからの小学館チルドレンであるとして、漫画賞2度目の受賞を喜んだ。作画の池上氏も、「まさかこの年で漫画賞をもらえるとは思わなかった」と喜び、受賞の知らせに感激して思わず稲垣氏をハグしたことを明かした。「もちろん一人では描けない。優秀なスタッフに支えられている」「晩年に花を咲かせてもらった」と感謝の言葉を述べた。
『逃げ上手の若君』は作者の松井氏が、同作が集英社で連載されていることから、受賞を知って「なんで?と思った」と明かし、疑り深くいろいろ考えたが、「集英社の漫画であるとか、発行部数とかに関係なく、作品を評価されたと思った」として、結果的に「嬉しかった」と語った。
受賞者には、正賞としてブロンズ像「みのり」(中野滋作)、副賞として100万円が贈られる。