三松堂印刷(東京都千代田区)は1902(明治35)年創業、120年を超える歴史のある印刷会社だ。現在は持株会社・三松堂ホールディングス、営業会社・三松堂、工場(製造)部門・三松堂印刷に分社化し、さらに営業会社としてライト印刷、宮嶋印刷、映文社印刷、旭印刷を加えた7社で三松堂グループを形成。商業印刷・出版印刷とも24時間360日対応の印刷事業、並びに広告プロモーション、店頭プロモーション事業を展開している。
三松堂グループは各営業会社の活動によって大手代理店や大手出版社を顧客とし、コミックも含めた各種出版物から商業印刷まで幅広く、三松堂印刷に集約することで印刷~製本を行う。埼玉県熊谷市の工場とは別に、都内(板橋区)に原稿入稿から製本まで一貫して手がけることのできる工場を持っていることは顧客にとっても利便性が高く、大きな強みになっていると三松堂印刷営業本部の元木純一部長(執行役員)は語る。
「働き方」の変革や世代交代に課題
より良い人材の確保は、多くの事業者に共通する大きな課題ではないだろうか。それは三松堂グループも同様で、「特にコロナ禍以降、家族関係を大切にした働き方の見直しや実家の継承といった理由で退職を選ぶ社員の増加、定年を迎える社員に比べて新しく入ってくる若手社員の数が少なく世代交代が進まない、などの実状がある」と三松堂ホールディングス総務部の師岡宏治部長は語る。昨今の状況に見合う、残業削減をはじめとする勤務体系の見直しやデジタル化など、いわゆる〝働き方改革〟により賃金面も含め全般的に待遇を改善。また自社での新卒社員の定期採用や必要に応じて随時中途採用も行っている。だが、なかなか十分な採用~社員としての定着には結びついていないという。
高評価の口コミで派遣を迎える
元木部長は長年懇意にしている取引先で、ブリッジのグループ会社であるウォームアンドビューティフルからの派遣社員がとても良い人材だという話を聞く。三松堂では基本的に派遣社員・契約社員の活用は行っていなかったが、昨今の状況を見て、良い人材に来てもらえるならばと相談。その際、最初に「ぜひ良い人材を」と話したことを覚えているそうだ。その結果、2023年に営業事務で1名の派遣社員を迎えることとなった。今後は半年~1年間の勤務を経て正社員に登用の予定。先々一緒にがんばってくれる人材であってほしいと考えている。
ていねいな基礎研修にメリット感じる
派遣された社員は、三松堂での勤務にあたって事前に印刷業に関する基礎研修を経て選抜された人材だったという。「印刷会社での勤務経験のある方が担当についているので、業務内容を理解したうえでていねいな基礎研修を行ってくれました。おかげで業務上の基礎知識も申し分なく、周りにもうまく溶け込んでくれたと感じています」と語る元木部長。採用~基礎研修にかかる時間・業務量・経費面のコストを考えると、すでに基礎研修段階まで終了している人材が来てくれるメリットは非常に大きい。
その社員が担っている業務は、見積もりや伝票、現場への印刷見本の作成など、内勤が主の営業事務。「ある得意先では見積もりが膨大なため処理が追い付かずにいたところ、その社員が来てくれたことで対応がスムーズに。結果、受注量が2~3割増えました。それに担当の方も、その社員が体調不良で長期に休んだ際にはこちらの業務の状況にも気配りをしながら交代人員の提案もしてくれて、とても丁寧にやりとりができる」と、ウォームアンドビューティフルの対応には非常に満足していると元木部長、師岡部長、両者とも口をそろえる。
正社員採用への新たな道筋
今後も、営業部や経理事務の担当者に欠員が生じた際は派遣の相談をしたいという。半年~1年勤務し、三松堂に馴染んだ上で正社員として採用する。そうした道筋ができたことへの期待は大きいようだ。「こちらの期待にそった方が来てくれることがわかったので、自社での採用の他に人材派遣という選択肢が増えた。その意味は大きいし、同じ派遣でどこか違う会社に頼もうかという選択肢は現状ありません」と師岡部長は語る。
求める人材について、元木部長は「業界的にはデジタル化も進んで大きく変化し、働きやすくなったと思う。ウォームアンドビューティフルから来る人は事前の基礎研修で必要な知識があるので、スキル云々というよりも、真面目に取り組んでくれればそれで良い。もちろん顧客それぞれに関する業務内容など、勤務開始後に覚えてもらうこともかなりあります。それも前向きに捉えてくれるのであれば、そう苦になるものではないはず。そういう人と、喜んで一緒に仕事をしたいと思います」と述べた。
また工場勤務のオペレーターも良い人材を随時求めているため、出版業への人材紹介が中心ではあるものの同社とグループ会社・ブリッジの幅広いネットワークに期待。継続して相談していきたい、という。