徳間書店は3月16日、東京・品川区の本社にて、話題の新刊『水脈』の発売を記念して、ベストセラー作家・伊岡瞬氏のトークイベント&サイン会を開催した。
『水脈』は、13万部突破の人気小説『痣』の続編で、「暗渠(あんきょ)」に関連した連続殺人事件の謎に迫るミステリー。人気の刑事コンビが復活ということもあり、発売前に重版決定、書店売上ランキング入りも果たしている。この刊行記念として開催された伊岡氏初のトークイベント&サイン会に、会場での観覧とインターネットでの配信も含めて約40人のファンが参加した。
トークイベントでは、第一部「初の警察小説『痣』『水脈』はこうして生まれた」、第二部「小説『タネ』の見つけ方」をテーマに、執筆の裏側が明かされた。
第一部では、自身初の警察小説となった『痣』について、「警察小説というとストーリーに重きを置くことが比較的多いが、自分にしか作り出せないキャラクターに重点を置いた警察小説を書きたいと思ったのがとっかかり」と振り返った。そこで生み出された『痣』の名コンビ、真壁&宮下刑事が『水脈』で再び登場する。この2人をはじめ、それぞれに人間味あふれる登場人物たちのキャラクター作りについて、「趣味のひとつである人間観察」がヒントとなっていると明かし、日常のなかで実際に出会った印象的なシーンやエピソードも披露した。
また、『水脈』の重要なキーワードのひとつ「暗渠」とは、もともとあった川や水路などに蓋をしたもので、街の地下に存在する“見えない川”のこと。今作では「地下を流れるドロドロしたものの象徴」として描いたこと、そして実は身近にある暗渠についてのマニアックな知識や参考にした資料についても紹介した。
第二部では作家活動の原点となる読書体験や、それらの作品から得た「小説のタネ」をテーマにトーク。幼い頃から読書好きで、「シャーロック・ホームズシリーズを一気に読んだのが読書熱の始まり」と語る伊岡氏だが、「小学生時代の得意科目は理科。中学時代は『ブルーバックス』シリーズが愛読書で、科学者になりたかった」と回顧。その頃の空想から生み出された作品もあるという。小説のタネは、「探そうとして見つかるものでもない。ある瞬間にぽっと小さいタネが出てくるもの。そのアイデアを憶えておいて引っ張り出すという感じ」と物語着想のヒントを語った。
さらに、影響を受けた作家の話や得意な料理の話など、進行役を務めた徳間書店の大久保光子さんとの掛け合いで、さまざまな話題を盛り込みながらの軽妙なトークが約1時間半にわたり展開された。トーク終了後は参加者の質問に回答。続いて著書のサイン会が行われ、一人ひとりのファンとの記念撮影に応じながら交流を楽しんだ。リアル参加者には伊岡氏手描きのメッセージ入りのしおりやチケットケースがプレゼントされた。