文化通信社セミナー2024 有隣堂 松信健太郎氏 「有隣堂の新たな価値創造への挑戦」

2024年4月16日

 文化通信社は4月4日、東京・千代田区のHIBIYA CENTRAL MARKET(ヒビヤセントラルマーケット)内の飲食店「一角」で文化通信社セミナー2024を開催した。講師として有隣堂代表取締役社長の松信健太郎氏が登壇し、「有隣堂の新たな価値創造への挑戦」をテーマに講演を行った。リアル会場には28人が参加し、オンライン視聴でも多くの出版関係者が参加した。

 

 会員向けの同セミナーは、オンラインを中心に年18回実施される予定。コロナ禍の影響もあり、リアル会場での開催は約2年ぶりとなった。70分のセミナーのあとには、引き続き同会場で親睦を深める懇親会も開催された。司会・進行は文化通信社取締役社長執行役員の星野渉が務めた。

 

松信社長

 

 松信氏は、まず有隣堂の書店事業の現状についてスライドを示しながら説明。「有隣堂の書店事業は9年連続で赤字が続き、売上高は18年前のピーク時(307億円)から35%減少している深刻な状況にある」と明かした。71期(22年9月~23年8月)の商品別売上構成でいうと、書籍・雑誌が34.3%、アスクルなどの通販商品が31.3%で、72期ではこの2つが逆転すると松信氏はみている。書店事業以外ではB to B事業の外商が黒字を維持してきた。その黒字で書店事業の赤字を補てんしてきたが、前期は全社的に赤字決算となったと話した。

 

 次に、今までやってきたことを振り返った。書籍・雑誌の売上減少対策として、「複合化」を行ってきたとし、書籍のほか、雑貨やアパレル、カフェなど複合的に販売する店舗(ヒビヤセントラルマーケットや誠品生活日本橋など)の運営についても紹介。粗利率をみると、書籍のみより、転貸や飲食などの複合化を図った店舗のほうが利益が出ることをグラフで示した。

 

 また、ファンづくりのために始めたYouTube「有隣堂しか知らない世界」は好調で、登録者数は約28万人、昨年2月に発売された書籍は4刷1万3000部を誇るという。

 

 そういったさまざまな取り組みを行っては来たものの、まだまだ「根本的な解決には至っていない」とし、書店事業だけでなく、有隣堂の事業全体を祖父の泰輔氏の理念に基づいて再構築する必要があると考えていると話した。今後は、顧客目線に立った店作りを徹底、DXを通じて顧客ニーズを的確に把握・分析し、スピーディーに「複合化」を推進していくことが重要だと述べた。