新刊書籍を販売する調剤薬局「ページ薬局」(大阪府豊中市)で勤務する薬剤師の尼子慎太さんによる作品の推薦コメントが多方面で採用され、注目されている。
先日発表された2024年本屋大賞の発掘部門「超発掘本!」に選ばれた井上夢人さんの『プラスティック』(講談社)にも尼子さんのコメントが使われ、東京で行われた発表会に著者の井上さんと一緒に登壇するなど薬剤師としてのみならず書店員としてもやりがいを感じているという。
今年1月に刊行された森見登美彦さんの『シャーロックホームズの凱旋』では、「最高の読書時間を過ごせることをお約束します。僕にとっての『ホームズ入門書』は、間違いなくこの1冊です!!」のコメントが出版社や著者の目に留まり、ポスターはじめ、新聞広告にも使われた。
帯にも活用された実績
昨年の本屋大賞にノミネートされた『宙ごはん』(小学館)では帯にも掲載され、小学館ではほかにも『ぎんなみ商店街の事件簿』、『Q』、またポプラ社の『夜明けのはざま』もパブリシティに尼子さんのコメントが活用された。
尼子さんは取材に「採用されることを意識しているつもりはなく、作品を読んで率直な感想を綴っているだけ。『どう表現すればこの本の良さが伝わるか』を考えて書いている」と話す。
ページ薬局に勤務するまでは積極的に読書をするタイプではなかったという尼子さん。同局を運営する薬剤師・瀬迫貴士さんの影響を受けて早見和真さんの『店長がバカすぎて』(角川春樹事務所)を読んだことをきっかけに読書好きに。今では月に5~6冊のペースで読むという。
尼子さんは「これからも一人でも多くの人が本を読むきっかけづくりになるような仕事をしていきたい」と薬剤師との両立を誓っていた。 【堀雅視】