株式会社Nebraskaと株式会社トーハンは、既存書店が夜間・休日の無人営業により収益を改善できるハイブリッド書店運営ソリューション「MUJIN書店」のサービス提供を本格化させる。先行導入で実証実験を行った3店舗では売上増、経費削減の効果が確認されており、ITの活用で中小書店の経営を支えるサービスとして注目される。
「MUJIN書店」は既存店舗に、キャッシュレスセルフレジと入店用サイネージを設置することで、夜間や休日など従来の閉店時間に無人で営業できるようにする。無人の時間帯は、お客がサイネージに表示されるQRコードをスマートフォンで読み取り、LINEの友だち登録で認証することでドアが開錠される。
夜間の人通りや車通りがある立地などでの終夜営業や、休日も人がいる施設内の休日営業などが、人件費を増やさずに可能になる。また、採算が悪い時間帯を無人にすることで、売上を維持したまま経費を抑制するといった利用方法もある。
実店舗で売上増・経費減の効果確認
これまでにトーハングループの山下書店世田谷店(東京都世田谷区)、メディアライン曙橋店(東京都新宿区)、メディアライン大山店(東京都板橋区)の3店舗で実証実験を行い、山下書店世田谷店では売上高前年比が106.6%(全国実勢値比12.1ポイントプラス)、売上高対営業利益率が4.2ポイント、販売管理費前年比が7.9ポイント改善したのをはじめ各店で導入効果を確認できたという。
また、鳥取大学医学部附属病院にあるカニジルブックストアでは、「MUJIN書店」を導入したことで、病院の入り口が閉まっている時間帯も含めて7時〜22時の営業時間で年中無休、11時~15時にスタッフが常駐する体制が可能になった。
無人ということで懸念されるロスについては、入店の認証システムや完全キャッシュレス決済によって、万引被害などロスの増加はなく、店内での迷惑行為なども発生していない。
月額費用は6万5000円から
無人店舗というと、ITを駆使するイメージだが、「MUJIN書店」は導入機器をサイネージとセルフレジに抑え、初期費用を100万円程度から、月額使用料を6万5000円からと安価に設定。事前調査から導入までの期間は3カ月程度、工事による休業は1営業日程度で導入が可能だ。5月下旬から書店への提供を本格化させている。
2021年に会社設立したNebraska共同代表の横山卓哉氏は、「当社は苦境にある書店を何とかしたいと考えて起業したスタートアップです。MUJIN書店は既存店の収益を改善して持続可能にしていくために開発しました」と話す。
また、書店人の仕事をサポートすることも同社の重要なミッションだ。「MUJIN書店はセルフレジも備えており、書店員が選書やPOP作りなど付加価値の高い仕事に集中できるようにするものでもあります。夜間、仕事帰りなど従来の閉店時間でも書店員による個性的な品揃えに出会う機会を実現するものです」と横山氏は述べる。
同社では、AIによるレコメンドや、来店客の志向を分析する機能など、書店員をサポートする技術を開発し、さらに書店を支えるソリューションを充実させていくという。
株式会社Nebraska
代表者:代表取締役(共同) 藤本豊、横山卓哉
所在地:102-0071 東京都千代田区富士見1-3-11 富士見デュープレックスB’s4F
問い合わせ先:info@nebraska-tech.co.jp
【関連記事】
・【インタビュー】齋藤健経済産業大臣に聞く なぜ書店を支援するのか、書店振興PTに多くの反響
・経済産業省 書店振興プロジェクト、官民連携の取り組みが本格化 PT長・南氏「本や書店の存在意義、強みを生かす」
・【特集】書店振興プロジェクト 〈寄稿〉書店が求める支援、学び・文化の拠点を絶やさないために
・【特別寄稿】教育、文化の未来に必要な支援策 書店業界に問われる「三つの観点」(小説家・書店経営者 今村翔吾氏)
【書店ソリューション特集2024】
・書店へのトータルサポートを展開、出版社との連携サービスも提供(光和コンピューター)
・「Bookインタラクティブ」で発注業務を迅速・円滑に、書店と出版社をつなぐプラットフォーム(インテージテクノスフィア)
・ITを活用し書店を全力で支援! ベンチャーの力を結集して書店特有の課題解決に挑む!(サインポスト)
・MR技術活用「ボイスフレンド」 最新デジタル技術の活用で 書店への集客と売上アップを実現(日本出版販売)
・既存書店支えるローコストモデル「MUJIN書店」 中小規模の書店にも導入可能(Nebraska×トーハン)