【書店ソリューション特集】書店へのトータルサポートを展開、出版社との連携サービスも提供(光和コンピューター)

2024年5月28日

 株式会社光和コンピューターは、書店向けのPOSシステムで高いシェアを誇ると同時に、出版社向け基幹システムでも導入社数350社以上と最大手だ。書店に対してレジにとどまらず、無人店舗への対応、インターネットでの在庫開示、文具・雑貨を含めた原価管理、ポイントアプリやAIによる返品・仕入システムとの連動、出版社による店頭在庫の自動補充など、外部との連携を含めて多くのソリューションを提供し、書店向けトータルサポートを展開している。

 

POS・セルフレジ 豊富な導入実績

 

 同社は書店向けに店舗システム「BookAnswerⅣ」とPOSレジ「KPOS」、廉価版POSレジ「KPOSmini」を提供しており、大手取次の日本出版販売(日販)が取引先向けに提案するPOSシステムにも採用され、導入書店は110法人930台に達する。

 

 近年導入が進むセルフレジは、クレジットカード、電子マネー、交通系などほとんどの決済手段に対応し、図書カードリーダーとの接続も可能。ブックカバーや袋などを置く棚も備えた木製什器と金属製什器も提供する。

 

ブックカバーや袋を収納できるセルフレジ用什器も提供。写真は木製什器

 

 これまでに、くまざわ書店(東京)、ブックポート(神奈川)、啓文社(広島)、今井書店(鳥取)、喜久屋書店(兵庫)、カメヤ宇土シティ店(熊本)、宮脇書店越谷店(埼玉)、青山ブックセンター(東京)など、規模の大小にかかわらず多くの導入実績がある。

 

 同社セルフレジの特徴として、清算の流れを大きな文字でわかりやすく表示することや、購入冊数を読み上げる機能、顧客がレジを操作する中でブックカバーの要不要を選択できる機能など、利用者の利便性向上に力を入れる。

 

 またレジ本体の向きを変えて、メニューを切り替えることで、顧客が商品のスキャニングから決済まで行う「フルセルフ」、スキャニングなどを店員がサポートする「セミセルフ」、そしてすべての操作を店員が行う「有人レジ」としても利用できる。

 

 書店がセルフレジを導入する効果について同社の多田元晴取締役は、「大型店舗の場合、7、8人で運用していたレジコーナーのスタッフを、セルフにすることで1人にしたなど、人件費の抑制効果は明確です。また、最近は人手不足への対応で、小規模店舗をワンオペレーションで回したいというご要望も増えています」と述べる。

 

セルフレジは中小規模店舗をワンオペにする引き合いも増えている(写真はブックポート)

 

 そして、セルフレジ導入を検討する際にポイントになるのは目的をはっきりさせることだと多田取締役は指摘する。「導入目的が人件費の抑制なのか、効率のアップなのか。目的をはっきりさせないと効果があがりにくいと思います。導入する前に目的を明確にする必要があるということを、検討されている書店さんには説明しています」という。

 

 また、これまで多くの書店が売価還元で利益を把握してきたが、書店が文具、雑貨など出版物以外の商材を扱うことが多くなっている状況に対応し、書店向け原価管理システムのパッケージもリリースした。

 

無人店舗 入店管理にも対応

 

 同社のセルフレジは、このところ注目の無人店舗でも採用されている。日販が2023年9月に東京メトロ溜池山王駅構内でオープンした「ほんたすためいけ溜池山王メトロピア店」だ。

 

無人店舗「ほんたすためいけ」のセルフレジ

 

 この店舗は、LINEアプリによるデジタル会員証での入店管理や、キャッシュレスセルフレジ、ライブカメラによる遠隔接客など最新のテクノロジーで営業時間中は完全に無人で運営している。

 

 光和コンピューターが提供するセルフレジは、フルセルフ型2台。複数のキャッシュレス決済に対応し、図書カードも利用できる。レジコーナーでは商品のバーコードスキャンから決済までの流れを表示しているほか、レジの画面で決済方法などをわかりやすく表示する。

 

 さらに紙のレシートが不要なスマートレシートにも対応し、無人営業時にレシート用紙が切れてしまうといったリスクをなくすことが可能だ。

 

 同店舗はまだ実験段階だが、光和コンピューターには、書店からこれまで閉めていた夜間に営業を行う「ハイブリッド営業」や、不採算時間帯の無人営業などを希望する引き合いがあるという。すでに提供しているセルフレジやキャッシュレス決済に加え、アプリ認証や顔認証による入店管理といった仕組みも提供する予定だ。

 

ネットへの在庫公開 取り置きサービスも可能に

 

 同社は「BookAnswerⅣ」を導入する書店が、店舗の在庫をインターネット上に公開する「在庫公開」のサービスも提供している。くまざわ書店や喜久屋書店で活用を始めており、店舗での取り置きサービスも可能だ。

 

 利用者がネットの検索エンジンで欲しい本を検索すると、位置情報から近くの店舗の在庫が表示される。わざわざネット書店に注文しなくても、すぐに購入できるため、リアル店舗の付加価値を高めるサービスとして注目されている。

 

 一般財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)、一般社団法人版元ドットコム、株式会社カーリルが共同で運営し、書店の在庫情報をウェブ上で公開して地域の図書館などとも連動させる「書店在庫情報プロジェクト」とも連携できる。

 

「たなづくり」 出版社による店頭在庫自動補充

 

 出版社システムでも多くの実績をもつ同社は、書店と出版社をつなぐサービスも提供している。

 

 「たなづくり」は、同社のPOSシステムを利用する書店の入荷・販売・返品・在庫などの情報を出版社に提供し、このデータに基づいて出版社が定番商品を自動的に補充するサービスだ。

 

 店頭の省人化を進めざるを得ない中で、棚のメンテナンスが難しくなる書店に代わり、書店が設定した在庫の基準冊数に基づいて、出版社に発注情報を送信、取次経由で補充を行う。

 

 今年に入って、くまざわ書店が小学館、岩波書店との間で開始しており、定番商品の売れ筋に欠品がなくなることで、目に見えて実績もあがっているという。書店と出版社両方のシステムを手掛けてきた光和コンピューターならではのサービスといえる。

 

ポイントアプリ、AI仕入・返品 最新システムとも連携

 

 同社は株式会社今井書店が稼働したポイントアプリやAIを利用した仕入・返品システムの開発にも参加し、こうしたシステムの他書店への提供もサポートしていく。

 

 今井書店が運用を開始したポイント会員アプリ「BookStore」は、光和コンピューターとポイントやバリューを管理するウォレット「Pokepay(ポケペイ)」を提供するポケットチェンジが共同開発。POSと連動してポイントの付与や顧客ランク管理、キャンペーン情報のプッシュ配信などができる。

 

 店頭システムをセッティングすれば、POSレジでアプリ画面のバーコードを読み取ることで、ポイント付与が始められる。今年3月1日から1店舗でテスト運用を始め、4月1日からは全店で運用を開始した。

 

既存のPOS レジでポイント付与が可能に(写真は今井書店錦町店)

 

 AIで仕入・返品をサポートする書店MDシステム「BOOKS-TECH.COM」は、AI事業会社の株式会社ACESと共同開発した。

 

 返品システムは、「BookAnswerⅣ」で収集・管理している入荷・在庫・販売などのデータから、個別店舗ごとの最適な在庫を割り出し、優先順位を付けた不稼働在庫のリストに沿って返品する。

 

 仕入に関しても、返品と同様に個店別の販売傾向を分析し、何冊仕入れれば売り上げが最大化するのか補充注文すべき冊数を提示してスタッフの判断で発注する。

 

 まずコミックスの2巻目以降とビジネス書、文庫、新書など主要銘柄で稼働。実験でAIが仕入冊数を推奨した銘柄については、半年間での消化率が72%に達し、未稼働店の50%を大きく上回った。

 

株式会社光和コンピューター

代表者:代表取締役社長 寺川光男
所在地:101-0032 東京都千代田区岩本町3-1-2 岩本町東洋ビル5 階
問い合わせ先:メール⇒ml_csol@kowa-com.co.jp  電話⇒03-3865-1982(担当:香川)

 

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