株式会社インテージテクノスフィアは、書店の実売データを収集して出版社に配信する「出版POSシステム」「在庫データ中継」事業などを通して、30年以上にわたり出版業界に関わってきた。〈出版業界を「つなぐ」〉を合言葉に、書店・出版社間のビジネス課題をDXで解決することをめざす同社は、近年、書店・出版社間オンライン受注システム「Bookインタラクティブ」に力を注いでいる。
同サービスの開発・運営を担当しているエンタープライズ第二本部の馬場一朗氏と佐藤真也氏に話を聞いた。
書店アクティブユーザーは約70%を誇る
同社は、2014年にBookインタラクティブのサービスを開始した。現在、登録している出版社は107社、書店は5112店(5月1日時点)。登録書店数は、コロナ禍で2020年4月ごろ一時的に減少したものの、それ以降は増加傾向にあり、閉店を余儀なくされる書店が増えるとともに微減しているが、全体としては増加傾向にある(表2参照)。登録書店のうち、アクティブユーザーとして利用しているのは約70%(約3600店)だ。
書店がBookインタラクティブへの登録を申し込む際に求められる条件は、書店マスタ管理センターに登録し、「共有書店コード」を割り当てられていることのみだ。出版社と実際に取引するためには、取次との口座開設が必要となるが、口座がなくても登録自体はすることができ、書誌情報を検索・閲覧することは可能だ。
利用料金は、出版社は有料、書店は無料。登録すればすぐに利用開始でき、PCやタブレットなど複数の端末で同時にログインできる。例えばビル内で営業している書店でも、別々のフロアで同時に注文することが可能だ。イメージとしては、端末ごとに個別のカートを持っていることになるが、発注後に注文照会で履歴を確認することができるため、重複した注文があった場合は訂正をかけることも可能だ。
CSVファイルでの本部一括注文にも対応
また、CSVファイルを使用した注文にも対応しており、複数の店舗を持つ書店本部が各店舗に割り振ったエクセルデータからの一括注文なども容易に行うことができる。
書店向けサービスは、「注文」「注文照会」「販促ツールダウンロード」「ウオッチリスト」「(出版社からの)お知らせ」が既に実装されていたが、今年4月から新たに「返品承諾機能」と「JPRO書誌データ連携機能」が追加された。
「返品承諾機能」は、これまでFAXで行っていた「返品了解」をBookインタラクティブ上でできるようになるというもの。書店からの返品承諾依頼をBookインタラクティブが受付、出版社が画面上で承諾すると、書店は返品承諾書をダウンロードできる。出版社はオプションとして追加料金(毎月)が必要となる。4月にローンチされたばかりで、まだ導入している出版社は少ないものの、FAX利用削減の観点からも、前向きに検討している出版社が複数見られる。
「JPRO書誌データ連携機能」は主に出版社向けのサービスではあるが、JPROに登録・更新した書誌データがBookインタラクティブに連携されるため、既刊本の情報修正漏れ(いわゆるヒューマンエラー)が防止され、最新の正しい情報を書店でも共有することができる。
7月中には「新刊検索機能」が追加される予定だ。現状、新刊と近刊が混在した状態でリスト表示されるが、今後は出版社ごとの新刊に絞っての検索が可能となる。さらに、リストではなく書影での表示も可能になるため、来店客に端末の画面を見せて表紙を確認してから注文できるようになる。
また、画面のレイアウトも現状より見やすいデザインに変更し、既刊についても検索精度をアップするという。
外部サイトの情報閲覧時 すぐに注文が可能に
同じく7月中に、「外部サイト連携機能」も追加される。例えば、出版社が発信するSNSやメルマガ、書店向けのBtoBメディアなどにBookインタラクティブの商品詳細ページのURLを投稿・記載することで、書店はリンクURLをクリックするだけで、即時に注文したい本を発注することが可能となる(ログインしていない場合は、ログイン画面を経由してから商品詳細ページが表示される)。なお出版社はオプションで追加料金(毎月)が掛かる。
書店がBookインタラクティブを導入することによる最大のメリットは「24時間365日、いつでもどこでも注文可能」なこと。出版社はほぼ毎日、取次搬入日情報を入力しているため、情報の精度が高く、書店は実際の納品数や納品日を把握することができるため、客注対応がしやすくなる。
また、販促情報の収集はもちろん、POPや拡材などのダウンロードも容易にできる。
既に登録している書店が使用するシーンで多いのは、「補充発注」だ。一般の書店では、文庫・新書・文芸書については、客注より圧倒的に補充発注が多いためだ。一方、専門書を多く扱っている書店の場合は「客注」が70%近くになることも。注文全体の割合でいうと補充が多いものの、例えば「歴史書」など特定のジャンルで分けてみると客注が50%を超える。
客注については、発注画面の備考欄に顧客名をメモすることができ、書店は客注を把握することが可能で、例えば教科書を扱う書店では〇〇小学校などと納品先が明記されることが多いという。
書店からひと月に注文される冊数は約50万冊(表3参照)。利用している書店から聞かれるのは、FAXで注文していたときは送信後に届いたかどうかを確認するために電話をしたり、取引に行き違いが生じたりすることもあったが、Bookインタラクティブを導入してからは確認作業などを含め、さまざまな手間が省けるようになったということ。
また、24時間いつでも注文できるため、忙しい日中ではなく、業務が落ち着いた閉店後や夜間に発注できるのが便利だという。「出版社ごとに画面を切り換える必要もなく、複数の出版社にワンストップで注文ができる」と佐藤氏はBookインタラクティブを使用する書店のメリットを強調する。1冊から注文できることで発注に対する心理的なハードルも低くなるようだ。
ITに不慣れでも使いこなせる操作性
驚くべきは、現在4000店近くの書店がアクティブに活用しているにもかかわらず、インテージテクノスフィアへ操作についての問い合わせがほとんど見られないということだ。日々、書店や出版社の要望に耳を傾け、細かな修正や機能追加を行っているとはいえ、操作がしやすいことは明白だ。
少し前のことだが、ウェブサイト上で書店にアンケートを実施し、「Bookインタラクティブを導入してほしい出版社」について尋ねたところ、幻冬舎と宝島社の2社を希望する声がとくに多く見られたという。そんななか、今年の1月に幻冬舎が、4月に宝島社がBookインタラクティブの導入をスタートした。幻冬舎は、独自に受発注システムの開発を検討していた時期もあったようだが、書店からBookインタラクティブの利用を乞われたこともあって今回の導入に至ったそうだ。
書店側の画面にある「各種お問い合わせ」をクリックすると、インテージテクノスフィアのヘルプデスクはもちろん、各出版社を選択することができ、そこで問い合わせ内容を入力すると各社へメールが送信される。キャンセルなどもここに入力することができる。
今後、機能面で追加したいと考えているのは、お知らせ画面のジャンル分けだ。書店ではジャンルごとに担当者が分かれていることが多いので、出版社の販促情報もジャンル分けをしたいと検討している。
馬場氏は「書店向けの情報をもっと充実させて、書店が常に使用するツールにしたい」と話す。今後は、書店向けの説明会なども実施して、さらに登録書店を増やし、出版業界を盛り上げていくつもりだ。
「Bookインタラクティブ」に関する書店向けアンケートを実施中
締切:6月10日(月)23:59
https://forms.gle/zXUK3Uoo8v9vy2df7
株式会社インテージテクノスフィア
URL:https://www.intage-technosphere.co.jp/
所在地:〒188-0001 東京都西東京市谷戸町2-14-11
問い合わせ先:pubpos-sales@intage.com (担当:馬場、佐藤)
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