【書店ソリューション特集】ITを活用し書店を全力で支援! ベンチャーの力を結集して書店特有の課題解決に挑む!(サインポスト)

2024年5月28日

 サインポスト株式会社(東京都中央区)は2007年創業。地方銀行等を中心としたコンサルティング事業に始まり、IT技術とコンサルティング力によって業種の幅を広げ、13年よりイノベーション事業も開始。コンビニ等での導入で注目を集めた同社が技術提供し、JR東日本スタートアップとともに合弁会社として推進している、ウォークスルー型の無人決済システム「TOUCHTOGO」の展開や、自社独自でもセルフレジを中心とした無人店舗ソリューションを開発し、全国の無人古着店、スイーツ店、企業売店等にも提供している。

 

セルフレジだけでは書店の苦悩を解決できない

 

 同社は、書店業界向けセルフレジ「ワンダーレジ-BOOK」を開発・提供。画像認識技術により商品をレジに置くだけで複数の商品を一括認識する。タッチ式の画面操作で取り扱いも簡便であり、書店・来店客双方にメリットも多い。すでに明文堂書店(事例記事参照)、大垣書店、教文館書店などで導入され、他店での導入も進みつつあるという。

 

 しかし「セルフレジを通して書店様の業務負担軽減や販管費削減等事業課題の解決に向けて取り組んできましたが、今の書店様の苦悩は、すでに業務負担の軽減や、販管費削減だけでは課題解決にはならず、まずは売上、原価、販管費のPLにダイレクトに効果を生み、営業利益を改善できる施策が必要と実感している」と、イノベーション事業部マネージャーの小嶋隆裕氏は語る。

 

 今後同社は、改善の道具の一つとしての「セルフレジ」も提供しつつ、同社が持つコンサルティング力とITの力を用いて書店事業を持続可能なものとするべくPL改善に直結するソリューションを提供していきたいという。

 

「ワンダーレジ- BOOK」

 

書店の再生は、売上の拡大が最重要

 

 サインポストからの提案は、大きく分けて①オムニチャネル事業支援などで売上創造、②ロス対策支援などの原価改善、③接客支援、セルフレジ導入などの販管費改善、④サイネージ等を活用した広告ビジネスによる新規収益獲得、となる。

 

 セルフレジによる販管費改善はこれまでも効果を実証してきたが、最近では①売上創造についても効果を示し始めたという。

 

 今、セルフレジを利用している書店以外の小売店からも、セルフレジを導入し、スタッフの労力がレジ業務に割かれることは少なくなり、その他の業務に注力できるようになった。しかし業務に必要十分なスタッフ数を確保しようとすれば、人件費を大幅に削減できるわけでもない。その分売上げを伸ばそうとしても、どうすればよいのか。

 

 そうした小売店の声を聞く機会が多かったという小嶋氏は、それに対する提案がビックデータの分析から導きだした、書店店頭を活用したオムニチャネル事業支援での売上創造なのだと語る。

 

書店の減少スピードが読者の需要減を上回っていることに注目

 

 同社の得意分野であるビックデータを活用した分析によると、書店の減少スピードが読者の購入需要を上回ってしまっているのではないか?との仮説にたどり着いたとのこと。そして具体的に、実証する中でまだまだ書店に売上を獲得できる可能性はあると、同社は分析結果より確信したという。

 

 「具体的には、店頭在庫を店舗販売、EC販売両方のニーズにこたえられる在庫とし、ECサイトによる販売を進めることです。現在持っている在庫をそのまま活かして、Amazonや楽天といったプラットフォームに出店することができる。加盟料程度の少額の投資でもう一つの販売チャネルを確保し、新たな売上げを生み出すことができます。純粋な利益増になるわけです」

 

 ただし、と付け加えたうえで「継続して利益を取るには仕入、物流費、梱包資材、出荷業務等のすべてを最適化する必要があり、その支援コンサルについてもサインポストが得意とする部分である」という。

 

 このような店舗ごとに異なる事情に合わせ、最適な方法を提案していきたい、とした。それには、例えばセルフレジを中心に構築する無人店舗(完全な無人店舗、また既存店に無人販売の時間帯を設ける形など)といった形も含まれている。

 

 

万引きで不幸になる人をなくしたい

 

 また原価改善については、書店の現状での営業利益と万引きでのロスを考えると、経営的に直結するのは万引きロスの低減だとする。そこで万引きロスを具体的に削減できるソリューションを提供できる企業とタッグを組み、オープンイノベーションによって課題解決する準備をしている。

 

 接客支援については、特に週末は問合せの電話が非常に多く、その対応にスタッフの労力が割かれてしまってその他の業務に支障が生じているという相談があった、と例を挙げる。例えば生成AIを利用したチャットbotなどによって、客注や問合せを的確に対応し、顧客のニーズを取りこぼさずに対応できるO2Oソリューションを準備している。

 

 

書店活性化コンソーシアムを組成

 

 イノベーション事業部では、書店向けの事業は、まだこれからの段階だとしながらも、事例が他店にも伝わり、いわば口コミのような形で相談を持ちかけられることが増えてきたという。

 

 「もともと出版業界の外で、ITやビッグデータを用いてお客様の課題解決をすることが得意な会社です。業界の外から客観的に見て、例えばデータを活かした品揃えを進めるなど、実はまだまだ改善の余地あるというところを探していけるのではないか。それが明文堂さんの例でも証明されたし、我々とともにオープンイノベーションを組んだベンチャー企業の経営者の中からも、『まだまだそれぞれの地域に目を向ければ書店は成長できるところがある。我々もぜひ協力したい』という発言も飛び出し、『書店にはまだ可能性がある』という確信になりました」

 

 「これまでオープンイノベーションによって実践してきたことを『これとこれができます、この中から選んでください』と勧めてしまわないように」と、既存の事例で用いたことを定型のメニューのように考えない。書店それぞれの事情に合わせ、経営者一人ひとりの顔を見ながら悩みに寄り添って最適と思われる改善策を提案する。

 

 そのためにコンソーシアムを組成する際も、これまで組んだ企業にはこだわらない。その時必要と思われる方策に、その時協力してもらいたい企業に協力を要請してパートナーシップを構築していく。

 

 そして「『困ったらサインポストに相談したい』と思ってもらえるようになりたい。それが目標です」と各書店との深く長い関係構築をめざしているとして、話を締めくくった。

 


明文堂プランナー 代表取締役社長 清水大志郎氏に聞く

オムニチャンネル事業で売上拡大

書店改革に向けたDX サインポストがサポート

 

 北陸地方や首都圏で12店舗を展開する株式会社明文堂プランナーは、昨年、金沢ビーンズ(石川県金沢市)とTSUTAYAレイクタウン(埼玉県越谷市)でサインポストのセルフレジを導入したが、合わせて店舗在庫連動型オムニチャンネル事業を開始。DXによる効率化と売上拡大を実現している。清水大志郎社長に、これらの取り組みと今後の期待について聞いた。

 

明文堂プランナー・清水大志郎社長

 

 ――セルフレジを導入した理由を教えてください。

 

 ウクライナ戦争の影響でいろいろなコスト、特に電気代が大幅に上昇し、それまで取り組んできたコスト削減策だけでは収まらないインパクトに対応するため、セルフレジの導入が必要だと考えました。

 

 また、先日リニューアルオープンしたTSUTAYAレイクタウンのようなショッピングモールの店舗では、平日に比べて土日の売上が倍ぐらいになるので、レジスタッフを増やさずに、ピーク時のレジ回転をどう上げるのかという課題を解決する狙いもあります。

 

 有人レジ9台だった金沢ビーンズはセルフレジ5台と有人レジ5台に、有人レジ6台だったTSUTAYAレイクタウンはセルフレジ6台と有人レジ2台にしました。その結果、レイクタウンはリニューアル以来売上好調ですが、レジはストレスなく回転しています。

 

 ただ、セルフレジを入れてスタッフがレジに立つ時間を減らしたからといって、人件費が減るとは限りません。そこで浮いた時間をどう使うのかが重要です。

 

 空いた時間を売場作りに使って売上を伸ばせればよいのですが、業界のトレンドを考えると、売上を飛躍的に伸ばすことは難しい。そこで、サインポストからの提案で、店舗在庫連動型オムニチャンネル事業をはじめました。

 

 現在、金沢ビーンズと高岡射水店(富山県射水市)の2店が出店しています。店舗の在庫を登録し、注文があるとスタッフがピッキングして出荷します。送料はお客様負担です。

 

 ピッキングなど作業とのバランスがあるので、ビーンズはまだ3フロアのうち2階(専門書)だけ在庫登録していますが、それでも毎日40万円、多い時で60万円ぐらい注文があります。その結果、ビーンズの売上前年比は2階だけだと30%増、全店でも1割ほど増えています。

 

 ビーンズより在庫が少ない高岡射水店も、在庫量に応じた注文があります。これを他店舗に広げていきます。人口の少ない地域の店でも在庫量に応じた注文が入ってくれば、業界のダウントレンドを補い、書店生き残りに効果があると思います。

 

 ――ECもサインポストがサポートしているのですか。

 

 社内には知見がなかったため、EC事業の立ち上げからサポートしていただきました。また、既存の基幹システムとの在庫データ接続や、出品商品の制御、出荷システムの構築等を提供してもらっています。今後はシステム開発してパッケージとして提供いただき、他社に先んじた手を打っていく予定です。

 

 ――サインポストへの期待をお願いします。

 

 インターネット上には、通常の本屋さんでは追いきれない需要予測するためのデータがたくさん存在します。こうしたビッグデータを分析できれば、店頭の品揃えも変わり、ECも含めた店頭在庫の活性化につながると考えています。そういうサポートも期待しています。

 

 また、サインポストには出版業界とは関係ない方が多くいらっしゃるので、そういう方に書店を見てもらうと、いろいろな無駄が見えたり、新しいアイデアが出てくると思います。業界の中にいると気付かない変革を起こせるという期待もあります。

 

 ――ありがとうございました。

 

サインポスト株式会社
代表者:蒲原 寧
所在地:〒103-0023 東京都中央区日本橋本町4-12-20 PMO日本橋本町6F
問い合わせ先:イノベーション事業部 wonder@signpost.co.jp

 

 


 

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