新潮社が主催する第23回女による女のためのR-18文学賞の贈呈式が5月27日、東京・千代田区の如水会館で開かれ、大賞を受賞した『息子の自立』の著者・広瀬りんごさん、友近賞を受賞した『君の無様はとるにたらない』の著者・神敦子さんが表彰された。
同賞は、応募者も選考委員も女性に限定している公募新人文学賞。応募総数798作品のなかから新潮社内の女性編集者による選考を経て6作品が最終選考に進み、選考委員の窪美澄さん、東村アキコさん、柚木麻子さんが大賞を決定、芸人で特別選考委員の友近さんが友近賞を決定した。贈呈式では、新潮社・佐藤隆信社長より賞状と賞金が、協賛のリベラグループからは記念品が贈られた。
障がいをもつ息子の性について描かれた大賞受賞作について、選考委員の窪さんは「まずこのテーマで書こうと思った広瀬さんの勇気に拍手を送りたい」と切り出した。女による女のためのR-18文学賞は創設時に「性」をテーマにした新人賞としてスタートし、現在は「女性ならではの感性を生かした小説」をテーマとしているが、「今回の受賞作品によって、ひとつの到達点に達した」と高く評価。
東村さんは「重いテーマなのにどこか軽やかで、愛を感じる。深刻になりすぎず、テンションが低空飛行していく不思議な気持ちよさを味わった」、柚木さんは「障がい者とケアする側一人ひとりの権利に目が向いていて、当事者を作品のなかで都合よく消費しないという意識を感じた」とそれぞれ称えた。
特別選考委員の友近さんは、友近賞受賞作について「最初は淡々と読み進めていたが後半に向かって引き込まれていき、最後の長いセリフを読んだとき思いがけず涙があふれた。その瞬間にこの作品と決めた」と選考の決め手を語った。
また、同賞は歴代受賞者を中心としたつながりによる交流が盛んに行われていることから、窪さんは「女子高みたいな賞。仲間がいて、一流の先生、編集者もいる。どんどん頼って良い作品を書き続けてほしい」と受賞者の二人にエールを送った。柚木さんも「毎回、時代の先陣を切る新しい才能が出てくる賞。先人の孤独があると思うが、受賞者同士が仲良しで独特な雰囲気のある良い賞」と語り、東村さんは「小説を読む人は本当にいっぱいいる。ハードスケジュールで作品をどんどん生み出してほしい」と激励した。
受賞のあいさつで広瀬さんは「私には障がいをもった息子がおり、彼を見ていると言葉がなくても生きていける。言葉で何かを表現できると信じていたものが崩れる瞬間、まだ言葉にならない気持ち。その間でゆらゆらしているものを、これから書いていきたい」と思いを語った。
神さんは「これまで落選が多く、悩みながら書き続けてきたが、賞をいただき、書くことを許していただいたのかなという不思議な気持ちでここにいる。これからも丁寧に書くことを続けていきたい」と意欲を表した。