実務者向け法律専門書を刊行する株式会社青林書院は今年、設立70周年を迎えた。これまで20年以上にわたって光和コンピューターの販売管理・印税管理のシステムを利用してきたが、7月には直販(EC)機能を持つWebサイトを短期間で全面リニューアルした。
大学教科書から法律実務家向けにシフト
手掛けるジャンルは一貫して法律専門書だが、10年ほど前までは大学教科書が中心だった。全国の大学で採用実績があり、全売上の8割ほどを占めていた。しかし、当時からすでに大学教科書の採用が減少傾向にあったことから、実務者向け書籍に方向を転換。
かつて年間40点ほどあった採用教科書は現在3点にまで減少しているが、「実務書のシェアを高めることで安定した経営を継続しています」と営業部・大塚博夫氏は述べる。
新刊の刊行点数は年間18~23点。稼働点数は300点ほどになる。なかでも刑法、刑事訴訟法の「大コンメンタール刑法」、「大コンメンタール刑事訴訟法」をはじめとした、「リーガル・プログレッシブ」、「最新裁判実務大系」、「最新裁判書式体系」、「最新青林法律相談」の大型6シリーズは定着し、同社の屋台骨を支える。「大コンメンタール」シリーズは、最高裁判所や法務省も毎年採用するなど、法曹界の実務者にとってなくてはならないアイテムだ。
さらに、『ライセンス契約の理論と実務―新時代ビジネスの知財活用戦略―』や『類型別 慰謝料算定の実務Ⅰ』、『事例解説 離婚と財産分与―裁判実務における判断基準と考慮要素―』、『破産管財実践マニュアル第2版』、『法人破産申立て実践マニュアル〔第2版〕』、『企業における裁判に負けないための契約条項の実務』といった人々の生活や仕事に直結する領域を扱う単行本の売れ筋も多い。
全国に197の常備店
読者の8~9割は裁判官や弁護士、司法書士、行政書士など専門家が占める。販売ルートは取次・書店ルートが9割で、読者への直販は弁護士事務所や司法書士事務所などへのメールやFAXによるDMで受注するほか、WebでのECも受けている。
書店流通はトーハン、日本出版販売(日販)、楽天ブックスネットワークと法律専門の大学図書と取引。取引条件は買切りだが、大型書店や裁判所・弁護士会館内の書店など全国に197店の常備店を擁する。
執筆者からの指摘でサイトリニューアル
光和コンピューターの販売管理・印税管理システムは2000年に導入して以来、安定して稼動を続けている。物流業務を委託するニューブックの在庫情報や出荷データを日々取り込み、各取次への納品伝票や請求書を発行。大塚氏は「このシステムは決算期の決算資料作成にも欠かせません」と話す。
やはり同社が構築したWebサイト経由での直接販売を以前から行っていたが、割合自体はネット書店の普及などもあり近年低下してきている。それでも、「以前から考えてはいましたが、1年ほど前に執筆者の方からスマホ対応を求めるご指摘を受けたこともあって、リニューアルすることにしました」(大塚氏)という。
今年3月に光和コンピューターからサイトリニューアルの提案を受け、7月には稼働するというスピードだった。稼働から間もないことから、まだ運用方法など模索中だが、「少なくとも見た目のインタフェースのクオリティーが向上しました」(同)と評価する。法律実務家に専門書を届けるツールとして期待している。
株式会社青林書院
代表者:逸見慎一
設 立:1953年
資本金:2400万円
所在地:〒113-0033東京都文京区本郷6-4-7
電 話:03-3816-5897