一般財団法人新潮文芸振興会は8月29日、「小林秀雄賞」「新潮ドキュメント賞」選考会を東京都内のホテルで開催し、受賞作品を決定した。第23回「小林秀雄賞」は池谷裕二氏の『夢を叶えるために脳はある「私という現象」、高校生と脳を語り尽くす』(講談社)が、第23回「新潮ドキュメント賞」は小沢慧一氏の『南海トラフ地震の真実』(東京新聞)がそれぞれ選ばれた。
池谷氏は1970年、静岡県藤枝市生まれ。薬学博士。現在、東京大学薬学部教授。脳研究者。著書に『進化しすぎた脳』、『単純な脳、複雑な「私」』(ともに朝日出版社/講談社ブルーバックス)、『記憶力を強くする』(講談社ブルーバックス)、『脳には妙なクセがある』(扶桑社新書/新潮文庫)、『パパは脳研究者』(クレヨンハウス/扶桑社新書)などがある。
新潮文芸振興会は「『私』、宇宙、時間といった重い主題を、解像度の高い言語で解き明かし、読者を本書の外にひろがる思念へと誘い出す。最新の脳科学を通じて、息の長いストーリーを構築した点を評価する」としている。
小沢氏は1985年、名古屋市生まれ。大学卒業後、コスモ石油を経て、中日新聞社に入社。東海本社、名古屋本社社会部などを経て東京本社社会部。東京地検特捜部、科学班などを担当。連載記事「南海トラフ80%の内幕」で2020年に「科学ジャーナリスト賞」を受賞。23年には本作を含む一連の報道で菊池寛賞を受賞。
「南海トラフ地震の発生確率は他の地震とは違う基準でつくられていた。その根拠となる一次資料に当たり、信憑性を検討していく過程に、ノンフィクションの醍醐味が感じられる」と高く評価された。