【SHINBUNYA~新聞屋の新分野~】愛媛新聞社 デジタル事業強化で地域経済底上げ

2024年9月18日

地元IT企業と連携

 

 愛媛新聞社は、愛媛県に本社を構えインド、米国にも拠点を置くIT企業のテックアイエスと連携し、デジタルカタログギフトや、消費者と企業をつなぐコミュニケーションツールの構築、さらに同社が開発した「IT人材育成プログラム」の共同セールスに乗り出すなど多彩なデジタル事業を推進し、ITスキルの向上、新規ビジネスの創出に貢献している。

 

カード型のデジタルカタログギフトは特許出願中

 

小学館とコラボ「ハーベスト」

 

 西日本豪雨(2018年)の被災地、その後のコロナ禍による事業者・生産者支援を目的に、愛媛県産の農林水産物や伝統工芸品をサイトで紹介する「ハーベスト」を開設。出版社の小学館も地方創生に取り組み、同社の女性メディア『Domani』の購読層と、良質な商品を提供したい愛媛新聞社のコンセプトが合致したことから連携を図り、首都圏への販路拡大も視野に入れている。


 一般的な冊子タイプではなく、カードの2次元コードを読み込みサイトから商品を選ぶ。メッセージや画像も挿入できるため贈答の際などに喜ばれているという。利便性と高品質の商品が好評で売上は23年度比2倍以上の伸びを見せる。


 今年は「『ハーベスト』能登半島地震 被災地支援プロジェクト」を立ち上げ、デジタルカタログギフトを被災地に届けた。2次元コードから画像やメッセージが表示される仕組みは、特許を出願している。

 

「#ヒキダシ」の仕組み(相談⇔回答)

 

消費者⇔企業 交流ツール

 

 21年にもテックアイエスのほか地元企業2社と協業し、LINEを活用して愛媛県内を中心とした消費者と企業を結ぶ「#ヒキダシ」をスタート。 ユーザーは企業への質問・相談やクーポンの取得、企業側は商品PRやリサーチに活用し、ニーズを知ることができる。


 7月末現在、累計で友だち登録は1万人を超え、企業・団体83社、クーポン提供には231店舗が登録し、企業のマッチング事業やツールを活用した広告事業を展開する。

 

人材育成PGMで愛媛新聞社員もITスキルを磨く

 

人材育成PGM

 

 テックアイエスとは包括的業務提携を結び、企業向けの「IT人材育成プログラム」の共同セールスを進め、企業のDX推進、ITスキル向上、その先の新規事業創出も見据え、展開を広げる。今では各企業から多様なデジタル関係の相談が増え、コンサルティング業的なビジネスの可能性も見えつつある。


 同社との連携について、愛媛新聞社営業局デジタル開発部・本多仁副部長は「愛媛の文化や経済を理解しているので地域に必要なサービスや製品を提供できる。それが地元の雇用創出、技術継承につながり、企業間連携の強化、競争力が向上し、全国、世界に通用する企業が育つ」と意義を語る。


 業務提携には愛媛新聞社員の研修も盛り込まれ、ITに強い社員が増えつつある。本多副部長は「新聞業界もシステムやコンテンツ開発、データ分析ができる人材の育成が急務。社内に各事業に合わせたITを駆使できる人材がいれば、効率的な働き方改革や事業戦略の進化、さらに競争力も磨かれ、新しい価値やサービスを生み出すことができる」と狙いを話す。


 また、「企業もデジタル分野への関心が高まっている。この潮流を受け、データ分析のパーソナライズ化、新規事業の創出に注力し、新たな収益源を確立していきたい」とさらなるデジタル事業の強化に意欲を示していた。【堀雅視