文化通信社セミナー2024 ブックセラーズ&カンパニー代表取締役社長・宮城剛高氏 直接取引で書店の未来を拓く挑戦

2024年10月24日

 文化通信社は10月10日、オンラインセミナー「直接取引で書店の未来を拓く挑戦―ブックセラーズ&カンパニーの現状と見通し―」を開催した。書店主導の出版流通改革を目指すブックセラーズ&カンパニーの宮城剛高代表取締役社長が、出版社との直接取引による書店粗利率30%実現に向けた取り組みと、実績を踏まえた今後の展望を語った。

 

オンラインセミナーを行う宮城氏

 

 宮城社長は、ブックセラーズ&カンパニーは直仕入をベースに仕入総額を維持しながらその中身を変えていく適正仕入れと、チェーンの垣根を超えた書店員の販売スキルで売上向上を図り「書店が販売、返品、売上に責任を持つことで出版社、書店双方が持続可能になっていく新しい取引を目指している」と説明。

 

 在庫リスクは書店がもち、新刊仕入はバイヤーがすべて事前指定注文する。条件は買切りまたは歩安入帳。現在の取次経由の主流はフリー入帳だが「書店が返品をきちんと意識しコントロールすることが今まで以上に求められる」と指摘。ゆえに「(粗利で最大)35%を目指せるが返品率が上がってしまうと今までの取次の委託より利益が悪くなる可能性もある。それでも粗利3割を目指すために、直接取引にチャレンジしなければならないことに賛同した書店に参画していただいている」ことを強調した。

 

 契約出版社は10月時点で11社(全銘柄包括販売コミット9社・単品買切り返品ゼロ2社)。このほかに大手含めて30社と交渉中だという。参加書店は全銘柄包括販売コミットが474店、単品買切り返品ゼロモデルが297店。具体的な内訳は、紀伊國屋書店が全銘柄33店(日販帳合)・単品67店。NICリテールズ全店108店、TSUTAYA直営加盟店全銘柄258店、単品112店、文教堂全銘柄75店、旭屋書店単品10店。

 

 直近4~9月で参加出版社の日販POSと直取引を比較すると、4月と5月は伸び悩んだが6月以降は直取引参加書店が5.7~11.6%上回った。文庫、実用書、文芸書、ビジネス書、児童書、オール、すべてのPOS売上で前年比増。返品率もすべて前年比減だった(-3.4%から-9.3%)。この実績について宮城社長は「今のところいいサイクルで回せている」と報告した。

 

 これから強化するのは「個店別アプローチ」。8月時点で400店のうち粗利改善が303店、粗利悪化が97店と、まだスキームが現場で適切に実行できていない事例が散見された。適正在庫の見極め不十分、店頭での販促不足、バイヤーの仕入精度などに一因があるという。

 

 現時点で、粗利30%以上、適正在庫(送品比率に見合う返品)、仕入前年増、売上前年増をすべて満たす優良店舗は、紀伊國屋書店流山おおたかの森店、オリオン書房イオンモールむさし村山店、紀伊國屋書店ゆめタウン徳島、リブロecute大宮店、紀伊國屋書店小田急町田店、パルコブックセンター調布店、谷島屋ららぽーと沼津、TSUTAYA弘前店、同鳥栖店、蔦屋書店茂原店。

 

 直仕入とともに注力している売上向上策では、特に既刊売り伸ばしを重視する。仕入金額ベースで前年比較をすると既刊(注文)109.9%、新刊(委託)102.3%。「動きが出ているものを二の矢、三の矢で迅速に手配して売上をつくっていくサイクル」を回していく。今後も「書店主導の流通改革にむけて挑戦していきたい」と締めくくった。

 

〈今後のオンラインセミナー〉

□10月31日(木)15:00〜16:30、メイツユニバーサルコンテンツ代表取締役社長・大羽孝志氏と代表取締役副社長中村有太氏による「安定成長を続ける小規模出版社―市場に対応する商品作りと営業手法」をオンラインで開催する。申し込みはPeatix:https://peatix.com/event/4138888

 

□11月14日(木)15:00〜16:30、PHP研究所第一事業普及本部本部長・植田光太氏による「書店営業の武器になる注文書とは―PHP研究所の非訪問先店舗への営業体制づくりと成果」を開催する。申し込みはPeatix:https://peatix.com/event/4146773