あさ出版は11月1日搬入、初版6000部で刊行した『ぼくは ぽんこつ じはんき』(文・由美村嬉々/絵・山本久美子)を皮切りに、絵本・児童書市場への参入を開始した。
同書は、人気ドキュメンタリー番組「ドキュメント72時間」(NHK)で、視聴者投票歴代1位を獲得した「秋田 真冬の自販機の前で」の回に登場した、うどん・そば自販機を主人公にした絵本。著者は『バスが来ましたよ』(アリス館)などを手掛けた由美村嬉々氏で、発売直後に増刷に至るなど好スタートを切った。
同社は創業当初、語学書と経営書を中心に事業展開する専門性の高い出版社だったが、現在では、自己啓発書などのビジネス書を中心に実用書、人文書など、幅広いジャンルを手掛けている。
今回、さらに新たな市場に参入する背景について、同社営業統括・木内準取締役は「当社は創業以来、新ジャンルへの開拓を続けてきた背景もあり、新しいチャレンジに対してポジティブにとらえる社内風土がある。それゆえ今回もスムーズに共通認識を持つことができた」と話す。一方、編集担当の同社編集統括・星野美紀取締役は「海外版権担当も兼任しているが、日本の絵本に対するニーズや関心度は高く、当企画に可能性を感じた」と話す。
同書を刊行するにあたり、NHKからコメントをもらえたことも大きく、図書館から引き合いも多い。さらには秋田でのイベント開催にともなう販売や直販ルートなども視野に入れている。また全国紙への広告出稿、秋田県内メディアのパブリシティ、SNS、由美村氏らの発信力を活用するなど、プロモーションに注力する。
木内取締役は「絵本という体裁ではあるが、“心温まる物語”という一点において弊社の代表作『日本でいちばん大切にしたい会社』などと共通している。そういう意味では、あさ出版らしい作品」としたうえで、「大谷翔平選手の活躍で8年前に刊行した『まんがでわかる 中村天風の教え』が再燃するなど、いつどのタイミングで売れるかわからないのが本のいいところ。一年後、二年後になっても売り続けていきたい」と力を込める。
また今後の絵本刊行予定について、星野取締役は「次の刊行予定も控えている。国内の作品だけでなく、当社と親和性の高い海外絵本作品も刊行していきたい」と展望を語る。