KADOKAWA 角川三賞贈賞式 山田風太郎賞に蝉谷さん『万両役者の扇』

2024年12月3日

 KADOKAWAは11月22日、第15回「山田風太郎賞」、第44回「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」、第15回「小説 野性時代 新人賞」の贈賞式を、東京・千代田区の東京會舘で開催した。

 

贈賞式で花束を持ち記念撮影に応じる受賞者たち

 

 山田風太郎賞は蝉谷めぐ実さんの『万両役者の扇』(新潮社)が受賞。「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」は〈大賞〉は該当作なし、〈優秀賞〉に浅野皓生さんの『責任』(KADOKAWA/応募時の『責』より改題)、〈読者賞〉に織部泰助さんの『死に髪の棲む家』(角川ホラー文庫)が受賞。小説 野性時代 新人賞は諏訪宗篤さんの『海賊忍者』、関かおるさんの『みずもかえでも』が受賞した(いずれもKADOKAWA)。

 

山田風太郎賞を受賞した蝉谷さん

 

 山田風太郎賞の選考委員の一人、夢枕獏氏は「候補の5作品どれも面白かったが、断トツのトップ。作品は以前よりも深みを増し、登場人物のキャラクターが良く描かれ、さらに文章のテンポも良く物語が展開していく。異世界ファンタジーと知りつつも、江戸時代は本当にこうであったのではないかと思わせてくれる作品」と絶賛した。

 

 受賞した蝉谷さんは、20年に第11回小説 野性時代 新人賞を受賞してデビューをしたことに触れ「この舞台に立つのは二度目。成長した姿を見せられて感慨深い。今作品は自分のマイナスの感情もぶつけてやろうという気持ちで書いた。今までは小説の奴隷として生きてきたが、今後は小説と殴り合える関係になりたい」とユーモアを交えて今後の抱負を語った。

 

 続いて、横溝正史ミステリ&ホラー大賞の選考委員である米澤穂信氏が2作について「『責』は書店で出合ったような、テレビドラマを観ているような端正な作品」、さらに「『死に髪の棲む家』は選考会場で大きく意見が分かれた、非常に個性が強い作品」と論評した。

 

 優秀賞を受賞した浅野さんは「自分の実力がどのくらい足りていないかが理解できた。大学生なのでモラトリアムに浸りながら、さまざまなことを勉強して次の作品に向き合っていきたい」と語り、読者賞を受賞した織部さんは「書店員として働きながら小説家を書いている。面白い本を読みたいという読者の思いに応えられる小説家になりたい」と話した。

 

横溝正史ミステリ&ホラー大賞を受賞した優秀賞の浅野さん(右)、読者賞の織部さん(左)

 

 最後に、小説 野性時代 新人賞の選考委員の冲方丁氏が「『海賊忍者』はタイトルを見て爆笑し、好きな作品が来た!と思った。多くの要素をすばらしい構成力で編み上げた作品。『みずもかえでも』は、新旧は対立するものだと思っていたが、そうではない現代の新旧のあり方がよく書かれていた」と2作品を高く評価した。

 

 諏訪さんは「作中で嵐のなか海に漕ぎ出すシーンがあるので、天候の悪い日に船に乗り、現代でもこれだけ揺れるのかと体感した。これからも良い作品を書いていきたい」と執筆への思いを語り、関さんは「この作品は芸術に焦点を当て、そのスタートラインに立つまでの物語。私自身も今回スタートラインに立たせてもらった」と喜びを語った。

 

小説 野性時代 新人賞を受賞した関さん(左)、諏訪さん(右)