白泉社の青年マンガ誌『ヤングアニマル』が2023年3月にローンチした「ヤングアニマルWeb」は、コミチの「コミチ+」で運営している。現在MAU約130万、PV約1000万。読者層も男性7対女性3、10代から50代までと紙の雑誌の『ヤングアニマル』よりも幅広いという。
ユーザー数が大きく伸びた背景には、「コミチ+」が得意とするSNSによるPRからサイトを訪れるユーザーの多さ、ダウンロードの必要なアプリではなくすぐに読めるWebであることが大きいと、マンガアプリ担当の経験もある「ヤングアニマル」編集部・安藤三四郎部長代理は語る。「WebはSNSの直リンクから気軽に来てもらえます。プラットフォームとしての役割のほかに最短距離の宣伝媒体としても素晴らしいです。後は2作品、3作品と横に読んでもらうことができるかですね」。
このようなSNSの動きは、まるよのかもめ『ドカ食いダイスキ!もちづきさん』のヒットを生んだ。『ヤングアニマルZERO』2024年6月1日増刊号(5月9日発売)で連載を始め、「ヤングアニマルWeb」でもサイマル配信を開始したところ、たちまちSNSで大きな反響を呼び、配信当日に日本のトレンド第1位に。
面白い作品であることは当然ながら、YouTuberや V-Tuberがヒロイン・もちづきさんが作るドカ食いメニューを再現して配信する、ネットミーム的な盛り上がりが大きかったそうだ。
「マンガにはこういう広がり方もあるのか、と思いました」と安藤さんはいう。編集部は5月17日に連載形態の変更を発表し、隔月刊の『ヤングアニマルZERO』と月1回配信の「ヤングアニマルWeb」とのハイブリッド連載に。10月に発売された単行本第1巻も発売前後に増刷、2週間で紙・デジタルの累計が10万部を突破した。
「昔だったらありえない、非常に特殊なパターン」(安藤さん)はまさに、雑誌とWebの両輪による体制だからこそ可能となった。さらに登録ユーザーが130万人を超えた現在、次のステップとしてIPの展開がある、とした。
そこでまずはコミチのノウハウによってグッズの限定販売に着手。『拷問バイトくんの日常』第5巻で特装版と作者・次見やをら描きおろしのA3複製原画・エプロンのセットで受注生産販売を行った。
コミチの萬田大作代表は、同作のアクリルスタンド販売も「女性ユーザーに受け入れられるアイテム」と分析した結果だという。
今後についても、「『ヤングアニマルWeb』というブランド基地があるから、こういった展開もできます。新しいIP展開によって、デジタルの読者がグッズを買うというつながりを作りたい」と語った。