タイ国チュラーロンコーン大学の研究者が、紙資料の寿命を15〜20年延ばすナノコーティングのアーカイブ用ニスを開発した。この技術は、文書・絵画・写真を腐敗・カビ・変色から保護し、タイの高温多湿の気候における文化遺産の保存に活用できるとみられる。
C2Fの博士研究員であるLunjakorn Amornkitbamrung博士、理学部のKanet Wongravee准教授、芸術学部の講師であるPanita Silapavithayadilok氏が協力してナノコーティング・ソリューションを開発した。この成果は同国の国立研究評議会から2023年度優秀発明賞を受賞し、すでに全国の主要な図書館で使用されている。
このニスは、Lunjakorn博士がオーストリアのグラーツ大学で進めていた博士課程での研究を発展させた。同博士は、紙の腐敗を遅らせる天然抽出物の使用について調べていたが、タイに帰国後、同国の高温多湿の気候に耐えられるように調合を改良。20年間の使用期間を想定した実験室でのエイジング・テストでは、コーティングされた紙はコーティングされていない紙に比べて強度を保ち、黄変しにくく、カビが生えないことが実証された。
ナノコンポジット技術を用いた有機セルロース抽出物のみのニスは、使用者にも素材にも安全だという。防水性、UV耐性、防カビ性、防汚性を備えながら、紙の耐久性を65%向上させる。また、繊維、木材、骨董品などのセルロース系素材にも効果を発揮する。
チュラーロンコーン大学中央図書館やチェンマイ大学中央図書館などの図書館は、古文書の保存にこのニスを塗ったところ、良い結果が得られたと報告している。研究チームは現在、木工や漆喰のような他の素材にも対象を広げ、保存ガイドラインを遵守するニスの開発に取り組んでいる。
同製品はすでに特許を取得しており、「SalvaStory」という商標で製造されている。問い合わせはメール(rebonding2024@gmail.com)またはFacebookファン・ページ(Re-Bonding: Innovative preservation.)。 【PRNewswire】