夕刊休止、富山県配送休止、紙面発行休止…
印刷・輸送にかかるさまざまなコストの増大などを受けて、朝日新聞、日本経済新聞、東京新聞などが一部地域で夕刊の発行を休止した。また、毎日新聞と産経新聞が富山県での新聞配送を休止すると発表し、業界内外で大きな反響があった。
中日新聞社は7月、中日新聞東京本社が発行する東京新聞の朝夕刊セット購読料を、9月から現行の3700円(税込、以下同)から3980円に改定すると発表。また、9月から東京23区を除く地域で夕刊配達と即売を終了して朝刊に一本化し、月ぎめ購読料を新たに3400円に改定した。
毎日新聞社は7月の毎日新聞北陸版の社告で、富山県への配送休止を発表。「これまで大阪府内の工場で印刷した本紙を輸送してきたが、印刷・輸送にかかるさまざまなコストの増大に加え、富山県内での発行部数の減少傾向もあり、これまで通りの配送体制を維持することが難しくなった」と読者に説明した。
産経新聞社も9月末で富山県での産経新聞、サンケイスポーツ、夕刊フジの発行を休止した。さらに10月には、夕刊フジを来年1月31日発行(2月1日付)をもって休刊すると発表した。デジタル端末の普及や新聞用紙をはじめとする原材料費、輸送コストの上昇などを理由にあげ、「創刊55周年の節目に、夕刊紙としての一定の役割を終えたという判断に至った」とした。
中日新聞社のスポーツ紙「東京中日スポーツ」も紙の印刷を休止し、来年2月1日から電子版に全面移行すると発表した。
購読料改定 引き続き相次ぐ
前年に引き続き、新聞各社が相次いで新聞の月ぎめ購読料を改定した。読売新聞社は12月1日、25年1月1日から朝夕刊セットの月ぎめ購読料を現在の4400円(税込、以下同)から400円引き上げ、4800円に改定すると発表。朝刊のみの月ぎめ購読料も3400円から3800円とする。
社告では、「用紙費や燃料費、人件費の上昇により、新聞制作や配達にかかる諸経費は増加し続けている。全国の戸別配達網と取材網を堅持するには、6年ぶりに購読料を改定せざるを得ないと判断した」と読者の理解を求めた。
地方紙も宮崎日日新聞社、北海道新聞社、北日本新聞社、新日本海新聞社、徳島新聞社、福井新聞社などが本紙の購読料を改定した。
北國新聞社も12月、2025年1月1日から、本紙の月ぎめ購読料を朝夕刊セット4400円(税込、以下同)から4900円に、朝刊3400円を3900円にそれぞれ改定すると発表。「石川県内のすみずみに毎朝新聞を届ける戸別配達網を維持し、県内唯一の地元紙としてきめ細かい取材網を堅持していくために、読者の皆さまにご負担をお願いすることになった」とした。
三菱重工 新聞輪転機事業から撤退
三菱重工グループの三菱重工機械システムは6月28日、新聞用オフセット輪転機の新台の製造を止めると発表した。共同通信がいち早く報じ、翌日に三菱側の正式発表があると、「新聞業界にとって非常にショッキングなニュース」と波紋が広がった。
同社は、1966(昭和41)年に初号機を納入して以来、延べ670台を超える新聞輪転機を、日本国内と海外に納入してきた。しかし、「新聞輪転機に関わる当社人員の高齢化が進むこと、使用している部品の調達が困難になっている状況などを踏まえ、このままでは製造・アフターサービスに必要な体制を維持することが困難となる」とした。
新聞輪転機の新台製造は、現在ある注文の契約分の納入で終了する。アフターサービスは、最長でも2036年3月までに終了する。それ以降のアフターサービスのあり方については、今後検討を進めるとしている。新聞業界では、三菱製の輪転機を使うユーザー社を中心とした連絡会もつくられ、先方との折衝が進んでいる模様だ。
SNSと選挙報道がメディアの関心事に
今年行われた衆議院選や東京都知事選、兵庫県知事選などで、SNSが選挙に及ぼす影響、SNSが社会世論の形成に与える影響が共通して指摘された。新聞やテレビなど伝統的なメディアにとって、大きな関心事となっている。
兵庫県知事選では、前知事の斎藤元彦氏が再選。SNSでの発信が原動力になったとも言われている。当時、斎藤氏の陣営を取材していた地元地域紙の記者によると、当確が出たあと、斎藤氏の選挙事務所前は多くの人であふれ、第一声を取材するマスメディアの記者にむかって、罵声も浴びせられたという。
また、各選挙ではSNSの配信を見たシニア層に、新たな動きがあったとも言われている。これまでテレビを見たり、新聞の読者だった高齢者が初めてSNSのニュースに触れ、その情報を鵜呑みにしてしまうようなケースもあったようだ。
SNS上の真偽不明な情報などが選挙結果に影響を与えかねない問題をめぐって、自民党が対応策の議論に着手したと報じられている。来年夏には参院選も控えており、各メディアの対応が注目される。
生成AI利活用で新たな取り組み進む
生成AIの活用がさまざまな分野で広がる中、新聞社も社内外での利活用、新たな取り組みを進めている。新潟日報社は10月、生成AI技術を活用した新規事業を担う新会社として、「株式会社新潟日報生成AI研究所」を設立することを発表した。
共同通信社も11月、ソフトバンク子会社「SB Intuitions」と生成AIの開発を目的とした業務提携に関する契約を締結したことを発表した。信濃毎日新聞社も12月、フューチャーアーキテクトとともに、メディア業界のコンテンツ編集に特化した生成AIモデルの研究開発を開始したと発表した。