本紙「The Bunka News」デジタル版 2024年 閲覧数ランキング  1位は「韓国元大統領が書店開店」

2024年12月25日

 

gmA_デジタル版アクセルランキングのサムネイル

 

 文化通信社はこのほど、2024年に本紙「The Bunka News」デジタル版でアクセス数の多かった記事を集計した(期間は1月1日~12月13日)。最も読まれたのは【ソウル通信】27 田舎本屋の店番になった元大統領 文在寅氏が故郷で書店開業(23年5月15日配信)だった。 【成相裕幸】

 

 同記事は昨年5月の配信当初から、国家の最高指導者たる大統領が地元に帰って書店主になるという極めて珍しい事例ということでよく読まれていた。再び注目されたきっかけは12月3日、現大統領が45年振りに「戒厳令」を発令したことによる出版業界外部の動きだった。その後、与野党による弾劾訴追案が可決。この突然ともいえる現最高指導者の行動と、元大統領の「余生」が比較されたようで、再びアクセスが急増した。海外出版・書店動向は現地の事情に通じている識者が少ないなかで、韓国国内の政治的背景にも言及した好レポートだ。

 

 2位はKADOKAWA ソニーGによる買収報道でコメント発表(11月21日配信)だった。ロイター通信が複数の関係者への取材に基づき特報した。

 

 同記事を受けて、KADOKAWAの株価は上場来高値を更新、直近の時価総額は6000億円を超えている。12月19日、両社は共同で戦略的な資本業務提携を結んだことを発表。ソニーグループが500億円を投じてKADOKAWAの筆頭株主になる見込みだ。

 

 各種報道をみると、世界的ヒットゲーム「エルデンリング」を送り出した連結子会社フロム・ソフトウェア等のゲーム事業とのシナジーを高く評価している模様だ。それ以外にもアニメ作品の共同制作や海外展開、両社の人材交流も進みそうだ。

 

3位秀和 「船井電機」余波で返品増?

 

 3位は秀和システムHD解散 船井電機が承継へ(22年2月25日配信)。2年前に配信した企業再編の記事が突如読まれ始めたきっかけは、今年10月24日のこと。秀和システム会長兼社長の上田智一氏が社長を務めていた船井電機が、東京地方裁判所に破産宣告を受けたことによる。

 

 先んじて上田氏は9月27日に、船井電機関連の役職を全て退任していたことも10月上旬に明らかになった。12月に入ってから上田氏はメディアの取材に応じるようになり、「(船井電機は)破産する状況にはなかった」などと答えている。

 

 その真相については今後明らかになっていくところもあるだろうが、出版業界内では不穏当な「余波」が起きている。この破産劇に関連してか、本紙記者は複数の書店チェーンが秀和システムの書籍を、大量に返品し始めているとの関係者の証言を得た。上田氏自ら大手書店に足を運び、事情説明をしているという。

 

トーハン配送引き継ぎ詳報

 

 昨年23年に最も注目されたであろう出版流通のトピックス「日本出版販売のコンビニ配送 25年終了」が直近に迫る中で、関連続報が複数上位にランクインした。4位トーハン『LAWSONマチの本屋さん』配送引継ぎへ 11月埼玉に新規店も(10月29日配信)、8位文教堂 コンビニ併設書店運営会社とFC契約解消 トーハンが配送引継ぎ(10月18日配信)、9位トーハン セイコーマートへの出版配送開始 北海道エリアはセコマ子会社と共配(11月14日配信)で、いずれもトーハンが配送を引き継ぐことを詳報した。

 

 なかでも、特に日販がローソンと始めた「LAWSONマチの本屋さん」への配送を、トーハンがすべて引き継いだ意義は大きいと思える。もともと「LAWSONマチの本屋さん」は、無書店自治体を中心に出店していたが、25年1月に茨城県守谷市のつくばエクスプレス守谷駅直下にオープンする新店周辺には、車で5分圏内に中規模書店が2つある。今後は「無書店自治体」に限ることなく、より狭い商圏での出店の可能性が高そうだ。

 

 6位の対談『書店×図書館を考える』 図書館流通センター代表取締役社長・谷一文子氏×日本書店商業組合連合会理事図書館委員会委員長・高島瑞雄氏(高島書房代表取締役社長)(10月29日配信)の記事は、図書館の具体的な納入の流れや受託費の割り振りなど、これまで表立って語られることがほとんどなく、業界に長くいる関係者でも初めて知ることが多いはずだ。両者の現状認識からは、かつて敵対関係と言われていた書店と図書館が協力して本を読者に届けるために何をしていくべきか、その方向性を探るうえで、重要な示唆が多くある。

 

 当記事配信直後、TRCは日販と共同で図書館で本を売る実証実験を始めることを発表した。お互いの長所を生かした連携が進みそうだ。

 

 10位のトーハン『HONYAL』 書店参入障壁下げ 『はじめやすくやめやすい』業態へ(10月21日配信)も、大きな話題を呼んだ。書店閉店が続き、持続可能な経営のために何が必要かが盛んに議論されるなかで、事業のキャッチコピーで「やめやすい」を打ち出した。また、信認金なし、送品週1回、掛率は通常の書店取引と同程度という契約体系に驚いた関係者も多い。

 

 トーハン広報によると、12月12日時点での問い合わせ数は261件。直近12月20日には、北海道地盤のオカモトホールディングスが「HONYAL」パッケージで受託運営する子ども室内遊戯施設「はれっぱ」(南幌町)の中に、絵本を中心とした書店を開店した(運営はオカモト)。

 

 また、これまで出版業界は業界の外にいる人たちに向けた周知が足りていないと言われてきたなかで、トーハンは「HONYAL」単体の広報として、読売新聞への全面広告や東京・吉祥寺駅等に構内広告を出稿。一般人に積極的に周知を広げていく動きもまた、新たな取り組みと言って良いだろう。