第15回「いっしょに読もう!新聞コンクール」 表彰式で児童・学生と新聞記者が懇談

2024年12月27日

 

最優秀賞を受賞した児童・学生と執筆記者ら

 

 日本新聞協会は、家族や友だちと一緒に新聞記事を読み、感想や意見などを書いて記事とともに応募する第15回「いっしょに読もう!新聞コンクール」を実施した。12月14日に横浜市のニュースパーク(日本新聞博物館)で表彰式が開かれ、小学生、中学生、高校生の各部門の最優秀賞受賞者に賞状などが手渡された。受賞者が選んだ記事を書いた記者との懇談も行われた。

 

 今回は、47都道府県から計6万1576編(小学生4707編、中学生2万5903編、高校・高等専門学校3万966編)の応募があった。その中から小・中・高校部門の最優秀賞を各1編、優秀賞を校種別に各10編、奨励賞を120編選んだ。優秀学校賞を小・中・高校各5校の合計15校、学校奨励賞190校を選んだ。

 

 小学生部門の最優秀賞は、安田学園安田小学校(広島県)5年の村上正真さんが受賞。選んだ記事は「34万人の生きた証し 胸に 名簿への記帳 病室で続けた」(朝日新聞、2024年8月7日付朝刊)で、曾祖母に意見を聞いた。

 

 村上さんは広島に原爆が投下されて79年の今年、原爆死没者名簿に関する記事を読んだ。曾祖母は記事に心を寄せた村上さんに謝意を示し、自身の体験を語るとともに、記事中の女性をねぎらった。「原爆投下という悲惨な歴史を自分事として捉え、曾祖母との対話をきっかけに、被爆者の声を未来に引き継いでいく決意を表明した」ことが高く評価された。

 

 中学生部門の最優秀賞は、広島大学附属中学校(広島県)2年の冨田花音さんが受賞。選んだ記事は「『子ども食堂』から『みんな食堂』へ」(中国新聞、24年5月24日付朝刊)で、叔母に意見を聞いた。子ども食堂を運営する叔母を持つ冨田さんは、人がつながる場としての食堂の価値に着目した記事を読んで共感した。「対話を通じて、子ども食堂を広い概念で捉え直し、地域社会に貢献できる食堂のあり方について考えを深めている」ことが高く評価された。

 

 高校生部門の最優秀賞は、福岡県立東筑高等学校(福岡県)3年の柴田深冬さんが受賞。選んだ記事は「広がれ コンサート手話通訳」(西日本新聞、24年1月23日付朝刊)で、母親に意見を聞いた。柴田さんは、応援しているアイドルのコンサートに行くことを日々の励みにしている。そうした中、「コンサート手話通訳」という見出しが目に飛び込み、聴覚障害を持つ人がコンサートを楽しむには高い障壁があることを知った。「コンサートという自分にとって身近なテーマを取り上げた記事から、障害者を取り巻く課題について理解を深め、工学を学ぶ夢を持つ自分や社会ができることについて思考を深め、提言していること」が高く評価された。

 

小学生部門最優秀賞の村上さん(左)と朝日新聞社の副島編集委員

 

 表彰式で、日本新聞協会NIE委員会・羽根和人委員長(朝日新聞東京本社)が最優秀賞を受賞した各氏を表彰。その後、授賞者と執筆記者との懇談が行われた。

 

 小学生部門最優秀賞の村上さんは、朝日新聞社の副島英樹編集委員(広島総局)と意見を交わした。副島記者は「今年は日本被団協がノーベル平和賞を受賞。来年は被爆80年でもあり、取材を進めている。今回、東京で広島の話ができる機会を村上さんがつくってくれた」と感謝。村上さんは「8月6日の広島『原爆の日』の翌日、平和や原爆に関する記事が載っていると思って新聞をめくり、この記事を目にして読んでみようと思った」と話した。将来の夢を聞かれると、「自分の考えを伝える側として、アナウンサーか新聞記者になりたい」と語った。

 

中学生部門最優秀賞の冨田さん(左)と中国新聞社の栾記者

 

 中学生部門最優秀賞の冨田さんは、中国新聞社の栾暁雨・呉支社編集部記者と懇談。富田さんは栾記者が書いた子ども食堂の記事を読んで、実際に母親と地元の子ども食堂へ取材に行ったことなどを報告。栾記者は「本社にいたとき、35歳以下の若者に新聞を読んでもらおうというプロジェクトを立ち上げた。私の記事を中学生が読んでくれて、深く考察してくれたことに感動している」と喜んだ。

 

高校生部門最優秀賞の柴田さん(左)と西日本新聞社の梅本記者

 

 高校生部門最優秀賞の柴田さんは、西日本新聞社の梅本邦明・北九州本社記者と話し合った。梅本記者は、今回書いたコンサート手話通訳の記事について、住民の疑問解消や地域の課題解決に応えるオンデマンド調査報道「あなたの特命取材班」(あな特)がきっかけだったことを明かした。柴田さんは「小学5年生のとき、西日本新聞社の子ども記者をしていて、新聞に1年間深く関わっていた。それからは、新聞をめくりながら気になる見出しの記事を読んでいる」と話した。

 

 また、梅本記者から「若い人に新聞を読んでもらうには、どんな記事だったらいいか」と聞かれ、「新聞に『堅い』『難しい』と感じる人が多い。新聞に関わってきた私には、それが信頼性などにつながる大事なイメージであることは分かるが、若い人たちが新聞を読まないひとつの原因では」と語った。さらに、「新聞は紙だけでなくスマホでも気軽に読める方がいい。気になった記事を〝スクショ〟して友だちと共有できるし、SNSで拡散もできる。新聞社がSNSをどう活用するのかも、すごく大事なことだと思う」と提案した。