丸善丸の内本店は2024年12月26日から3階のミュージアムゾーンで、8月に逝去した松岡正剛氏を追悼するフェア「伝説の本屋『松丸本舗』リターンズ」を開催している。松丸本舗は2009年から2012年、編集工学研究所所長の松岡氏と丸善丸の内本店が共同で企画・開発した、同店内に約65坪の書店空間を設けたショップインショップ。ジャンルや著者別ではない文脈の陳列方法や、各界の著名な愛読家たちの本棚を再現するコーナーなどが話題となったプロジェクトで、今回のフェアでは当時の松丸本舗の再現をコンセプトにすえる。
選書は編集工学研究所と松岡正剛事務所が担当し、松岡氏のWEB連載「千夜千冊」で紹介された1850タイトルの書籍の中から、今の時代に合った作品を厳選。それらを「キーブック」として位置づけ、さらに関連書3~4点を「枝本」として選書し、計1500タイトルを7つのテーマで展開する。なお「キーブック」には特製の帯を巻いている。
今年8月に松岡氏の訃報を受け、同店は緊急で追悼フェアを実施したが、その際SNSなどで松丸本舗に言及する声が多く、9月に入り企画がスタート。約3カ月で企画から発注、管理方法なども含め、急ピッチで進行し、実現するに至った。
棚差しの比率が高いフェア
今回のフェアでは、当時使われていたポスターやロゴ、松岡氏自筆のキャッチコピーなども展示するなど、松丸本舗の再現にこだわる。同フェアを企画・担当した丸善丸の内本店の友田健吾副店長は「特注で製作した当時の什器や規模感など、松丸本舗の完全再現は難しいが、現在の当店で実現できる範囲で、エッセンスを抽出し、追体験できるようなフェアとして再現したかった」としたうえで、「日中に接客をしながら準備できる規模のフェアではないため、夜勤シフトに切り替え、閉店後に夜を徹して準備した。選書はお任せしたが、それを棚で表現・演出することは我々の仕事。労力と時間をかけたからこそ、見応えのある棚にできたという自負はある」と書店員としての矜持を語る。
松丸本舗の再現を掲げる同フェアだが、平積みや面陳展開が中心となる一般的なフェアと比べ、棚差しの占める割合が多いという。友田副店長は「このフェアは衝動買いを想定したフェアではない。人文書好きや松岡ファンが食い入るように見て、1時間でも2時間でも時間を忘れて、棚の前で過ごしてくれれば」と話している。