『変な絵』(双葉社)文庫版発売 世界30カ国・地域でも出版 著者・雨穴さん 外国特派員協会で会見

2025年1月24日

 

日本外国特派員協会で初会見する雨穴さん

 

 人気のミステリー小説『変な絵』(双葉社)の文庫版が発売された1月16日、著者のユーチューバーで「覆面作家」として活動する雨穴(うけつ)さんが東京都内の日本外国特派員協会で記者会見をした。『変な絵』は同日、イギリスで英語版が発売されたほか、海外30カ国・地域(北米・ヨーロッパ・南米・アジア)での出版も決まっている。雨穴さんがマスコミの前に姿を見せるのは初めてということもあって、会見には国内外100以上のメディア関係者が出席した。

 

 

 双葉社によると、小説『変な絵』は国内でシリーズ累計120万部を記録し、世界累計150万部を突破している。文庫版には特典として、新たに登場人物の7年後を描いた49ページを書き下ろした物語「続・変な絵」と、雨穴さんが制作協力した「謎解きゲーム」が収録されている。

 

 すでに韓国、中国、台湾、タイ、ベトナムでは発売されており、1月からイギリスに続き、アメリカ、フランス、スペイン、オランダで同時出版される。さらに、ヨーロッパを中心に、その他地域(ドイツ、イタリア、ポルトガル、ルーマニア、リトアニア、ギリシャ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、ロシア、カタルーニャ、アイスランド、ポーランド、チェコ、スロベニア、クロアチア、ブラジル、インドネシア、トルコ、イスラエル)での出版も決まっているという。

 

 日本外国特派員協会での会見に、雨穴さんは白い仮面に黒タイツという〝普段〟の格好で登場。声をボイスチェンジャーで変換し、まず英語でのスピーチを行った。

 

 雨穴さんは21年に小説『変な家』(飛鳥新社)でデビュー。22年に2作目の『変な絵』を出した。スピーチで「今回、文庫版が発売された『変な絵』はコミック版と合わせて累計120万部となっている。そして1年ほど前に出した『変な家2』は昨年、日本で最も売れた本になった」と紹介した。

 

 さらに、「私の本を買ってくれる人の多くは若い読者。日本の出版業界の人たちは、その事実に驚いている。なぜ多くの若者が私の小説、この奇妙な者が書いた奇妙な本を楽しんでいるのか、理由は3つあると思っている」と分析。「一つ目は読みやすさ。二つ目はユーチューブで自分の本の面白さを伝えるための動画の発信などをしていること。三つ目は私の本がとにかく怖いこと」を挙げた。

 

 その上で、「今は多くの日本人が静かで不気味な、不安な気持ちにさせる物語が好きみたいだ。そして、そのような不安な物語こそ、私が書いているもの。これが私の本が若い読者に人気がある最大の理由かもしれない」と話し、「今の世界、日本は悲しいことばかりで大変な時代。若者や子どもたちはそのような不安な空気を感じ取り、それに対処するために、このような不安な物語に目を向けているのかもしれない。すべての子どもたちが何も心配することなく成長できればいいが、私にはそれを実現する力はない。だから代わりに、私は良い物語を書いて若い人たちに楽しんでもらいたい」と呼びかけた。

 

 質疑応答で、海外メディアや日本の全国紙の記者からの質問が相次ぎ、雨穴さんは時折ユーモアを交えながら答えていた。