第1回「北陸文庫大賞」の授賞式が1月24日、石川県の金沢ビーンズ明文堂で開かれ、八重野統摩『ペンギンは空を見上げる』(東京創元社)がグランプリに輝いた。特別賞の2作品は下村敦史『サハラの薔薇』(KADOKAWA)、越谷オサム『魔法使いと副店長』(徳間書店)が選ばれた。同日から北陸地方115書店でフェアが開催されている。
八重野さん「書店で本を購入し、読書のきっかけに」
グランプリを受賞した八重野さんは都内の東京創元社本社からリモートで参加し、明文堂書店・三村喜史氏が賞状と記念品を直接手渡した。
受賞者のあいさつで八重野さんは「私も元々は書店員で、友人からお薦めの本を紹介してほしいと頼まれることがある。年に1冊も本を読まない人が、わざわざお願いしてくるのだから、こちらも本気で本を選ぶ。書店で購入したお薦め本が面白ければ、それは人生に残る読書体験となる。また、手頃な価格の文庫本は、読書をしない人が本を買うきっかけ作りになる。とても意義のある『北陸文庫大賞』が今後も、長く続いていくことを願う」と述べた。
第1回の協力出版社はKADOKAWA、角川春樹事務所、河出書房新社、幻冬舎、講談社、光文社、集英社、小学館、祥伝社、新潮社、中央公論新社、東京創元社、徳間書店、早川書房、PHP研究所、文藝春秋、双葉社、ポプラ社の18社。
「重版しなかったけど良い本」、「認知度が上がれば、もっと人気が出そうな本」という括りで、出版社が文庫本を推薦し、86作品から書店員がグランプリ1作品と特別賞2作品を選出した。
富山・石川・福井の書店員が集う
授賞式の冒頭、実行委員長・海東正晴氏(勝木書店)は「皆さんの手助けがなければ、北陸文庫大賞を創設することはできなかった。文庫を刊行されていないのにも関わらず、励ましてくださった出版社もいる」と各関係者への感謝を語った。
そのうえで「書店の売上はさまざまな理由で右肩下がりになっている。要因の一つとして、私達書店人が商品の魅力を十分に伝えきれていないと感じてきた。それを踏まえ、自信を持ってお薦めできる作品を見つけ、1人でも多くの読者に送り出すため、北陸の書店員が集結した。読者が満足する本をお届けできると確信している」と強調し、第2回の開催につなげていくと意気込んだ。
三村氏も「北陸の書店員が選んだのだから間違いない、北陸文庫大賞を受賞した本だから1回は読まなければいけない。そんなふうに思ってもらえる賞に育てていきたい」と話した。
北陸文庫大賞実行委員会は、勝木書店(福井市)、ヤスサキ(福井市)、文苑堂書店(高岡市)、うつのみや(金沢市)、AKUSHU(福井市)、明文堂書店(富山県下新川郡)の書店員、出版社、出版取次会社の15名が集まり発足した「書宴 北陸会」をもとに立ち上がった。また、地元紙の北日本新聞社、北國新聞社、福井新聞社が後援となった。