講談社と読売新聞グループ本社が書店活性化で共同提言 キャッシュレス手数料やICタグ、地方創生交付金などで提案

2025年2月7日

 講談社と読売新聞グループ本社は2月7日、書店の活性化へ向けた提言を共同で発表。「書店向けキャッシュレス決済手数料の引き下げ」「ICタグによる書店のDX化」「書店と図書館の連携」「地方創生へ、新規出店しやすい環境整備」「読書教育の充実」の5点を提案した。両社はそれぞれの持つ媒体で識者や作家へのインタビュー記事を展開するなど、書店活性化につながるような取り組みを続けていく。

 

 共同提言の「書店向けキャッシュレス決済手数料の引き下げ」では、韓国で小規模小売業者のクレジットカード手数料が軽減されていることをあげ、日本でも小規模書店の手数料引き下げによる書店の負担軽減が必須だと指摘。

 

 「ICタグによる書店のDX化」では、ICタグを出版物に挟み込む「RFID」の導入に国や自治体の支援を求めている。「書店と図書館の連携」では、図書館が地元書店から書籍を購入、本の受け取り・返却業務を書店に委託するといった取り組みや、公立図書館による新刊書籍の貸し出しが書店での売り上げ機会を奪っているという意見をあげ、図書館と書店が共存できるルールづくりを提言。

 

 「地方創生へ、新規出店しやすい環境整備」では、2020年度にコロナ対策で新設された地方創生臨時交付金をあげ、地方創生交付金を書店の活性化につなげるべきと提案。「読書教育の充実」では、「絵本専門士」、「認定絵本士」、「読書アドバイザー」を活用し地域の読書イベントを支援することの重要性を指摘し、大学の教員養成課程に「読書教育」を盛り込むことを提案している。

 

 両社は地域書店の衰退を食い止め、活字文化や読書活動を守っていくべきという共通認識で、2024年9月から書店の活性化策を検討してきた。

 

■提言の具体的な内容

 

① 書店向けキャッシュレス決済手数料の引き下げ

 

 クレジットカードなどのキャッシュレス決済手数料が、小規模書店の経営を圧迫している。加盟店のクレジットカード決済の平均手数料率は2.7%とされ、粗利益率2割程度とされる書店にとって負担は重い。韓国では小規模書店などの手数料が軽減されている。手数料を引き下げ、書店の負担軽減を図ることが必須である。

 

② ICタグによる書店のDX化

 

 厳しい市場環境にある出版業界はDX化が遅れ、売れ行きや在庫管理がままならない書店も多い。ICタグ を出版物に挟み込み、在庫の電子管理を可能にする技術「RFID(Radio Frequency Identification)」を導入すれば、棚卸し作業が効率化されるほか、売れ残った本の返品を減らすことができ、万引きの防止にもつながる。ただ、導入・運営のコストが大きく、なかなか導入が進まないのが実情だ。業界で普及を急ぐとともに、国や自治体にも支援を求めたい。

 

③ 書店と図書館の連携

 

 書店も図書館も住民にとっては「本との出会い」の場であり、いずれも重要な「文化の拠点」だ。両者が連携して読書活動の振興を担い、読書人口を増やしていく必要がある。図書館が地元の書店から書籍を購入し、本の受け取り・返却業務を書店に委託するなどの取り組みも想定できる。一部には、公立図書館による新刊書籍の貸し出しなどが、書店での売り上げ機会を奪っているという意見もある。図書館と書店が共存できるルールづくりを考えたい。

 

④ 地方創生へ、新規出店しやすい環境整備

 

 地方の書店が減ることは、地方文化の衰退につながりかねない。都市と地方の「知の格差」を防ぐことは、政府が掲げる地方創生という観点からも重要だ。コロナ対応のため、2020年度に新設された地方創生臨時交付金では、全国の多くの自治体が子供たちの教育機会を守るため、図書カードを配布した。緊急時以外でも地方創生交付金を有効に使い、書店の活性化につなげるべきだ。

 

⑤ 読書教育の充実

 

 「読書離れ」に歯止めをかけるには、本に触れる機会を増やす必要がある。国や自治体は、絵本に関する高度な知識を持つ「絵本専門士」や「認定絵本士」、読書活動を支援する「読書アドバイザー」を活用し、草の根的に行われている地域の読書イベントを支援することが重要だ。学校教育で、読書の大切さや楽しさ、本の選び方などを教える「読書教育」の充実も急務である。教員に読書の意義や価値を知ってもらうため、大学の教員養成課程に「読書教育」を盛り込み、教員を目指す学生が体系的な読書の指導法を身につけられるようにしてはどうか。障害者向けの本を図書館に多く配備するなどバリアフリー図書の拡充も欠かせない。

 

 共同提言の全文は下記リンク先と、読売新聞オンライン(YOL)と2月7日の読売新聞朝刊に掲載している。

 講談社 https://www.kodansha.co.jp/shotenshinkou

 読売新聞グループ本社 https://info.yomiuri.co.jp/pressrelease/4753.html