TSUTAYA尼崎つかしん店 「独特で面白い出版社フェス」 作り手の「思い」届けたい

2025年2月18日

 

 

 兵庫県尼崎市の「TSUTAYA尼崎つかしん店」で、独創的な本を出版する出版社を集めた「独特で面白い出版社フェス」が催され(3月23日まで)、読書愛好家らの人気を呼んでいる。出展社の担当者が直接来店する即売会(月末開催)は予想を上回る反響で、店長の中村圭佑さんは「これまで多彩なイベントを実施してきたが、最高の売上を出している」と手応えを感じている。

 

ユニーク出版社20社が尼崎に集結


 中村さんは「本をPRする際、どうしても『重版〇刷』、『〇〇賞受賞』といったキャッチーな言葉で引き付けようとする。しかし、訪店される出版社の営業さん、商談会では社長や編集の人とも話す機会があり、企画段階から出版に至るまで一冊に込めた『思い』があることをたくさん聞き、その『思い』も読者に伝えたいとずっと考えていた」と話す。


 昨年、親交のあった西日本出版社(大阪)の内山正之社長に相談すると「ユニークな出版社を集めてフェアをしよう」と提案され、構想がスタート。「独自性」、「面白い」をテーマに出版社への呼びかけを始めた。140B(大阪)、能美舎(滋賀)、学芸出版社(京都)らも賛同し、最終的に20社以上が集う大型企画が実現した。


 ユニークな作品約250点(1000冊以上)を並べたフェスは好評で、1月の即売会には、ミシマ社(東京)、本の雑誌社(同)、BlueSheep(同)、百万年書房(同)、共和国(同)などが登場し、来店客は普段、店頭で大きく展開されない作品を興味深く手に取っていた。


 2月は、『あふれでたのはやさしさだった』(西日本出版社)の著者・寮美千子さんのトークライブが催され、多くの人が詰めかけた。24日には、『人生を狂わす名著50』(ライツ社)でデビューした三宅香帆さんのサイン会が予定されている。


 中村さんは「知らなかった出版社や本と出合い、喜ばれていたお客さんもいたが、小規模な出版社や、まだ認知の低い著者にもしっかりファンがついている」と感想を述べる。

 

 

「売ることで恩返ししたい」と熱く語る中村さん

 

「熱量」がリアル書店の価値


 中村店長推薦は『絶望のトリセツ』(法藏館)、『いっとかなあかん神戸』(140B)、『増補版 スマホで見る阪神淡路大震災』(西日本出版社)。


 「ひとり出版社から大手の有力版元までバラエティに富んだフェアができた。一人の社は企画会議もなく、『つくりたい本をつくる』、そういう作品にはディープなファンがつくということをあらためて知ることができた。内山さんはじめ、協力いただいた出版社には感謝しかない。売ることで恩返ししたい」と中村店長。


 また、「ほかの書店も私では考えつかないようなアイデアを持っていると思う。読書文化振興のため、お客さんを呼び込むためにリアル書店ならではの企画を展開してほしい。今回参加いただいた出版社は、熱量を持った書店にはきっと協力してくれる」と書店活性化への期待も語っていた。  【堀雅視】

 


フェア情報
独特で面白い出版社フェス
場所=TSUTAYA尼崎つかしん店(兵庫県 尼崎市 塚口本町4-8-1グンゼタウンセンターつかしん内 にしまち 2F)/営業時間=10~21時/即売会や各種イベントはXなどSNSにて