児童書を出版する金の星社は、長年、光和コンピューターの販売管理・印税管理などの「出版ERP」を利用しているが、コロナ禍で本格化した電子書籍を管理するため2022年には「PUBNAVI」を導入した。
1919年創業の児童書専門出版社
同社の創業は1919年。社名にもなった童謡童話雑誌『金の船』(のちに『金の星』に改題)を、野口雨情を初代編集長に創刊したのがスタートだった。
戦時中の企業整備令による会社統合や空襲による戦災、戦後もGHQによる検閲など混乱期を乗り越えてきた経緯もあり、平和への思いも強く、高木敏子作/武部本一郎画『ガラスのうさぎ』や、つちやゆきお文/たけべもといちろう絵『かわいそうなぞう』といった戦争をテーマにした名作も刊行。
戦後80年を迎える今年は書店フェアなどを企画。「平和の大切さを令和の子どもたちにも発信し続けます」と広報室・金澤真美子さんは話す。
年間の新刊点数は2024年に108点など、毎年100点以上を刊行、書店ルートのほか、図書館、幼保こども園、生協等向けに販売している。
「想定以上の動き」になった『火の鳥 いのちの物語』
最近のトピックとして、昨年4月に初版1万5000部で刊行した絵本『火の鳥 いのちの物語』(鈴木まもる著)が6刷7万部と、金澤さんも「想定以上の動き」という売れ行きになっていることがある。
たまたま鈴木氏が出演したラジオ番組を手塚プロダクションの関係者が聞いたことをきっかけに、手塚治虫のライフワークの絵本化が実現した。手塚マンガ世代が自分と孫に贈るために購入するケースも多いといい、手塚プロダクション側も、小学校高学年以上向けだった『火の鳥』を、より小さい子どもに知ってもらうきっかけになると評価している。
また、昨年12月に刊行した苅田澄子作/柴田ケイコ絵『おばけずし』が、2月末出来で4刷2万5000部と売れ行きを伸ばしている。大ヒット作「パンどろぼう」(KADOKAWA)の柴田氏による作品ということもあり、同社が2021年に刊行した中川ひろたか作/柴田ケイコ絵『カピバラの だるまさんが ころんだ』も動き始めている。
そして、さらに「意外」だと話すのは、全5巻の図書館向けシリーズで刊行する星座写真家KAGAYA氏による『月と星座』が、各巻定価3520円という高額にもかかわらず、1月に第1巻を発売したところ多くの予約が入っていることだ。KAGAYA氏はファンが多く、情報が広く拡散されている。2~5巻は3月に刊行する。
紙と電子の支払調書一括作成
システムは2006年に光和コンピューターの「出版ERP」を導入し、販売管理、印税支払、制作・原価システムを利用。2022年には電子書籍の販売印税管理システム「PUBNAVI」も導入した。
在庫管理や出荷など物流業務は一橋グループの出版ネット&ワークスに委託。出版ネット&ワークスからは毎営業日に受注、在庫、出荷などのデータがCSV形式で送られ、販売管理システムに取り込んでいる。
電子書籍化を本格化したのはコロナ禍前後から。電子図書館を導入する公共図書館が増えてきたためだ。電子取次メディアドゥを通して納品している他、ポプラ社「Yomokka!」のサブスクサービスや一般電子書店などにも提供している。
現在は新刊発売時に作者の許諾を得た作品は電子化の準備をするが、紙と電子の同時刊行はしていない。紙書籍の普及販売や書店事情を考慮して、紙版発売から1年後をめどに電子版を発売することをルールにしているからだ。
「販売サイドからの要請で過去作品を含めてEPUBデータを作成しています」と製作を担当する市村康史氏。それでも月に10点程度を電子版で発売。電子書籍の累計刊行点数は450点に達している。
電子版の扱いが増えてきたことで「PUBNAVI」を導入。電子書籍の販売管理、印税計算を効率化するとともに、紙印税は「出版ERP」、電子印税「PUBNAVI」で帳票を出力しているが、支払調書については「出版ERP」で紙印税と電子印税を合わせて支払調書を作成することが可能になっている。
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前列左から金澤さん、基幹システムを担当する横山志野さん、後列左から市村さん、販売部の花ケ前盛武さん
株式会社金の星社
代表者:斎藤健司
社員数:35名
創 立:1919年11月1日
資本金:2500万円
所在地:〒111-0056東京都台東区小島1-4-3
電 話:03-3861-1861(代表)