Book Fair Championship 日本で一番面白い書店フェア決まる 初代チャンプはMARUZEN&ジュンク堂書店 新静岡店の久保田氏

2025年3月7日

初代チャンピオンの久保田氏(左)に棚橋選手からチャンピオンベルトが贈られた

 

 全国の書店員が日本で一番面白い書店フェアの企画を競い合う「OVOL 日本紙パルプ商事 presents Book Fair Championship」(以下、BFC)の初代王座が決まり、チャンピオンベルトの贈呈式が3月3日、東京・豊島区のジュンク堂書店池袋本店で開かれた。全国から154件のエントリーがあり、初代チャンピオンにはMARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店の久保田理恵氏が企画したフェア「新社会人応援フェア Working girl Routine #本庄静子の一日」が選ばれた。

 

 BFCは、書店で実施されているフェアを広く世の中に発信し、書店の垣根を越えてフェア情報を共有するとともに、ユニークなフェアを展開する書店への来店促進を目的に創設した。また、本の売り手である書店員の企画意欲をかき立て、書店の売場がより魅力的なものになること、クリエイティブな書店員という仕事にスポットライトを当てることを目指している。

 

 初開催の大会には、紀伊國屋書店など書店チェーンや地方の書店、独立系の書店などさまざまなタイプの書店に務めている書店員、店主がエントリーした。事務局によると、エントリーした書店員歴は1年から10年が48%で、比較的若い世代の書店員がチャレンジした。書店のエリアは近畿・関東で53%、フェアのジャンルは「文芸書・文庫」が17%、次いで「ジャンルレス」が15%だった。

 

 エントリーされた154件のフェアを、BFC実行委員とクラウドファンディング支援者の計約120人が一次選考し、ベスト10を選出。滝口悠生氏(小説家)、三宅香帆氏(文芸評論家)、久禮亮太氏(書店主)の3氏が最終選考で、1位から3位までを選んだ。

 

 初代チャンピオンには、チャンピオンベルトと賞金30万円を贈呈。第2回BFC(第1回防衛戦)は来年2月に開催する。直近1年以内(24年10月1日~25年11月30日)に企画、実施したフェアを募集し、ベスト10を選出。初代チャンピオンが新しく考えたフェアを加えて、ベルトをかけた防衛戦を行う。

 

 初代チャンピオンの久保田さんの企画は、架空の人物・新社会人の本庄静子(22)を応援するフェア。初めての一人暮らしや仕事に悩みつつも、美容や趣味も頑張りたい彼女の新生活を応援するため、各ジャンルの担当と相談しながら、参考になる本を集めて展開した。朝食・お化粧・仕事術・家事関係・スキンケア・趣味など各5~8冊ほどの本をセレクトし、期間中に入れ替えをしながら変化のある棚づくりを心がけた。Xで発信したり、オリジナルのフリーペーパーも作成した。

 

初代チャンピオンの棚を再現して展示

 

 贈呈式の冒頭、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する「梅田 蔦屋書店」の店長で、ひとり出版社「書肆汽水域」としても活動する北田博充実行委員長が総評。BFC実行委員の堀内理氏(ジュンク堂書店三宮店店長)がベスト10のフェアを紹介した。

 

 続いて、協賛企業賞「OVOL 日本紙パルプ商事賞」の発表で、日本紙パルプ商事の筌口康史氏(上席執行役員、新聞・出版営業本部本部長)が登壇。受賞したフェア「わたしの推し本POPコンテスト」を企画した西沢書店(福島県)の松本照実氏に賞状を手渡した。

 

 第3位のフェア「中万々店では1冊も売れていない悲しい俺だけどそれはキミに出会うためだったんださよならなんて言わず今すぐ連れて帰ってくれないかフェア」(鎌倉綾氏/TSUTAYA中万々店)、第2位のフェア「一冊書店」(岡田菜織氏/HMV&BOOKS SHINSAIBASHI)の発表後、スペシャルプレゼンターを務めた新日本プロレスの代表取締役社長兼選手の棚橋弘至氏が登壇し、初代チャンピオンの久保田氏の腰にチャンピオンベルトを巻いた。

 

 久保田氏は「まだ実感がわかないが、とても光栄に思う。今回のフェアは、私一人ではなく新静岡店のスタッフみんなで考えて作り上げることができたので、感謝している」と喜んだ上で、「(初代チャンピオンとして)防衛戦をやらなければならないと聞いているので、新静岡店のみんなと一緒に戦うつもりで考えていきたい」と意気込みを語った。

 

(右から)棚橋選手、久保田氏、北田氏によるトークセッションも行われた

 

 贈呈式後には、久保田氏と北田氏、棚橋選手によるトークセッションも行われた。高校時代に国語の成績を上げるため、先生のアドバイスからよく本を読むようになったという棚橋選手は、久保田さんに「チャンピオンはそのジャンルを引っ張る存在。チャンピオンが全力で走るからこそ、他の書店員が追いかける。そうすることで(業界全体の)レベルが上がる」と期待した。

 

 また、「BFCへのエントリーに迷っている書店員のひとも、ぜひ一歩踏み出してほしい。挑戦しなければゼロの位置から一歩も動かない。挑むことで、その経験が必ず自分の力になる。行動することにこそ価値がある」と呼びかけた。

 

 ベスト10のフェアのうち1~3位以外は次の通り。

 

(フェアタイトル/プランナー〈敬称略〉/店名)

 

 ▽ペイフォワード文庫/高木久直/走る本屋さん高久書店

 

 ▽芳林堂書店と、10冊/山本善之/芳林堂書店高田馬場店

 

 ▽3冊の本/江藤宏樹/広島 蔦屋書店

 

 ▽米津玄師と文学/千葉拓/紀伊國屋書店横浜店

 

 ▽疑似体験職業フェア/上野恵佑/TSUTAYAデイズタウンつくば

 

 ▽みんなのBOOKS ~一冊だけの書店員募集~/渡邉典朋/萬松堂

 

 ▽あなたにぴったりの本~16Personalitiesのタイプで選んだとっておきの一冊/松本泰尭/二子玉川 蔦屋家電