メディアプラットフォーム「note」を運営するnote株式会社は4月、子会社Tales & Co.(テイルズ・アンド・コー)株式会社とともに物語投稿サイト「Tales(テイルズ)」を新たにオープンする。創作した物語を誰でも投稿することができ、その物語は誰でも読むことができる。出版社をはじめ、映像会社、配信プラットフォーム、マンガプラットフォーム、ゲーム制作会社などの外部企業と手を組み、話題の作品は小説、マンガ、アニメ、映像などさまざまなメディアを通して、多くの人に届く機会をつくる。書き手のために出版や映像化など多くの「出口」を用意するとともに、良い書き手、物語を求める出版社などメディア側のニーズにも応える。

現役作家らに執筆機能を実際に体験してもらうリアルイベントを、東京・千代田区のnote本社イベントスペース「note place」で開催
noteはこれまで、21のメディアが参加する「創作大賞」をはじめ、クリエイターのデビューにつながる多数のコンテストを実施してきた。noteで話題となったコンテンツは、これまでに300冊以上が書籍化されており、舞台化や映像化へと展開した作品も誕生している。
今回開設するTalesは「クリエイターの可能性を広げ、メディアの壁も、言語の壁も突破するようなエンターテインメント作品を送り出す」物語投稿サイト。共同運営するTales & Co.は、noteの完全子会社として2024年5月に創業。作家の才能と作品の可能性を広げるエージェントとして、出版社や映像会社などさまざまな外部企業と連携。登録クリエイターは600人を超える。「特定のレーベルに縛られない両社の自由な立ち位置を活かし、Talesに投稿された作品をさまざまな出版社、映像会社、動画配信プラットフォームなどとマッチングしていく」としている。
今年2月12日に新サイトの立ち上げを宣言。その後、クリエイターから100件以上の質問や期待の声があったという。そして、3月10日には、4月の本オープンに先がけ、執筆機能のベータ版を公開した。本オープンまでの期間、クリエイターからの意見を踏まえ、さらに利便性・快適性をブラッシュアップしていく。
また、有望なクリエイターの輩出を目指す創作コンテスト「創作大賞」は過去3回実施してきた。24年の第3回は出版社など21のメディアが協賛し、過去最多の5万2750作品の応募があった。今年からnoteとTalesとの共同開催とし、受賞作は各メディアで書籍化、連載化、映像化などを目指す。その「創作大賞2025」の一部ジャンルについて、3月10日からTalesでも投稿・応募ができるようにした。
具体的には、マンガや映像の原作となり得る作品を求める「エンタメ原作部門」で、3月10日から4月21日までの応募期間に、Talesから同部門にエントリーされた作品は、参加メディアが先行して審査する。メディア化に向けて検討を進めたい作品があった場合、創作大賞の最終結果の発表を待たずにメディアから声をかける場合もあるという。
エンタメ原作部門に参加するのは、アミューズクリエイティブスタジオ▽KADOKAWAタテスクコミック▽月刊少年マガジン編集部▽週刊少年マガジン編集部▽デジタルマーガレット編集部▽テレビ東京▽マガジンハウス漫画編集部▽LINEマンガ▽マーマレードコミックス▽ルネッタコミックス──の全10メディア。なお、創作大賞2025としての参加メディアはさらに増える可能性がある。
3月10日のベータ版公開を前に、同8日には現役作家らに執筆機能を実際に体験してもらうリアルイベントを、東京・千代田区のnote本社イベントスペース「note place」で開催した。当日は午前と午後の2回に分け、新サイトの機能デモンストレーションや作家らによる実機体験、交流の場が設けられた。

作家らを前にあいさつするnoteの加藤貞顕代表取締役CEO
冒頭、あいさつしたnoteの加藤貞顕代表取締役CEOは「小説などの物語をメディア化することに特化した場所があった方がいいと考えて、新サイトを立ち上げることにした。さまざまな出版社やプラットフォームと手を組んで、多様なジャンルの出口を提供する。小説の書籍化にとどまらず、多様な形態(まんが、Webtoon、ショートドラマ、アニメ、ゲームシナリオなど)でのヒット作を生み出すプラットフォームを目指す」と語り、利用を呼びかけた。
加藤CEOは文化通信社の取材にも応じ、「作家の皆さんが気持ちよく創作活動を続けられて、その先に多様な『出口』があると良い。チャンスをつかみたいと思っている人は多いので、(メディア化)の機会を広げたい。一方で、出版社側もより良い作品を常に求めている。両者のニーズが顕在化しているので、そこをつなげる場所を用意する」と新サイトの狙いを話した。
また、「Talesは、常にさまざまなコンテストが行われる場所になる。その中で最も大きいのが『創作大賞』という位置付け。出版社などメディアの冠を持ったコンテストも実施したいので、たくさんのメディアに参画してほしい」と呼びかけた上で、「出版社に良い作家や作品と出会い、その作品がヒットして利益につながってほしい。そうして(参加する)出版社やレーベルが増えることで、作家らクリエイターも増えていく」と、新サイトによる相乗効果への期待を語った。